外部から中途採用した中堅の人材を、どう育成すべきか。新人と同じような研修内容はそぐわないが、当人の経験頼みとするわけにもいかない。GEは中途採用者のなかから有望な人材を選りすぐり、個々人にカスタマイズされた育成プログラムによって幹部候補に仕立て上げる。


 学士や修士、博士の学位を取得したばかりの社員に向けた研修プログラムは、以前から企業で行われてきた。毎年、多くの企業が大学のキャンパスに殺到し、自社の人材プールにふさわしい候補者を求めて争奪戦を繰り広げる。そして新入社員はプログラム期間中、定期的に訓練とメンタリングを受けながら、さまざまな職能と部門を体験する。1~2年のプログラム期間が終了するまでに、新卒者はその後の厳しい仕事に取り組む準備を完了しなければならない。

 新入社員向けの研修は人材開発戦略に不可欠であり、キャンパスからビジネスの世界に出るための唯一有効な手段であることが多い。その効果はてきめんだ。しかし、次のような場合はどうすべきだろうか。事業地域の拡大に伴い、自社の文化と職務要件に見合う人材が十分に確保できない時。あるいは、新たに買収した企業のリーダーたちを自社に迎え入れる時。そして、自社の新入社員向け研修プログラムを受けたことのない外部の人たちを、大量に中途採用する時。

 こうした課題に対応すべく、GEでは中堅社員向けのリーダーシップ・プログラムを開発した。これによって自社の人材プールをさらに拡充するとともに、スキルの幅を広げ、昇進サイクルを速めている。

 アメリカ空軍で10年間にわたり、第一線のパイロットとして活躍したジム・スミス(仮名)がGEに入社したとしよう。彼は人文科学系の学士とMBAを取得しているが、ビジネスの場での経験がない。新人向けのプログラムを受けるには年齢がいきすぎている。そこで我々はジムを、幹部候補生向けの支援プログラムの1つである「コーポレート・リーダーシップ・スタッフ」(CLS)のメンバーに選出した。初めの1年半、ジムはベテランのリーダーの元で販売業務を担当。次の1年で商品開発の経験を積み、その後は工場の作業現場でオペレーションのリーダーを務めた。各ステージにおいて、ジムにはフィードバックが与えられ、最も弱いスキルを強化できる業務が次の課題として与えられる。3年におよぶプログラムの終了までに、ジムは業務の遂行に必要な知識とスキルを習得し、人脈を築くことができた。すると複数のリーダーから引っ張りだこの人材となった。こうして彼は、当社の重要なクライアントを担当するアカウント・マネジャーとなったのだ。

 我々はCLSを推し進めるなかで、以下のような教訓を得た。