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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

3Dプリンタの進化と普及は
日本がイノベーションを起こすビッグチャンス!

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第2回】 2014年8月18日
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 スマートフォンを3Dスキャナーにしてくれる「アプリ」も登場しています。スマホのカメラで立体物を撮影すると、その3Dデータが自動で作成されます。そういえば先日、ルーブル美術館で、彫刻をスマホでスキャンしている人を見かけました。彼は自宅に帰って3Dプリンタで復元して楽しむのでしょう。

 アート作品の3Dデータをサイトにアップロードし、それを誰かが手を加えて再びアップロードするといったクラウドソーシングも盛んに行われています。“オレの作品のほうが面白いぞ!”というわけですね。

3Dプリンタの生みの親は
日本人だった

 ところで、3Dプリンタの研究は1970年代に米国や日本で始まりましたが、最初に特許を出願したのは日本人の小玉秀男氏(当時、名古屋市工業研究所に勤務)だったということをご存知でしょうか。

 1980年に特許を出すところまできていたのに、何とも残念な話ですが、お金の問題などで特許を取れなかったといわれています。結局、4年後の1984年、3Dシステムズの創業者、米国人のチャック・ハル氏が特許を取得、今では世界一の3Dプリンタメーカーに成長しています。

 しかし、仮に日本人が特許を取っていたとしても、結果は同じで、3Dプリンタをリードしたのは米国なのかもしれません。というのも、製品化が日本ではなく米国で先行しているのは、イノベーションに対する両国のスタンスの違いを象徴しているからです。

 日本は失敗を警戒するあまり何も手を出さない、あるいは手を出しても初期段階のつまずきで、あっさりと撤退してしまう傾向があるように思われます。

 チャック・ハル氏が特許を取得してから30年、ようやく3Dプリンタは前述したようにさまざまな分野で実用化され始めました。世の中を劇的に変えるような技術は一朝一夕には完成しないということですね。

現在の性能を基に
ビジネスを考えてはいけない

 とはいえ、現状の3Dプリンタは、まだよちよち歩きの状態。パソコンでいえば「MS-DOS」の時代です。しかしだからといって、メーカーになることにビジネスチャンスがあると考えるのは間違い。数年後には劇的に技術が進化する反面、価格はどんどん安くなることが予想されるからです。前回述べたように「ICT(情報通信技術)は重要だが、半導体やストレージなどの開発に投資してはいけない」というのと同じ理由です。

 また、現時点の3Dプリンタの性能を基にビジネスを考えるのもいけない。今、日本に求められているのは、ゼロからのイノベーションではなく、これからさらに進化する3Dプリンタの技術を想定し、新しいビジネスモデルを創り出すイノベーションではないでしょうか。

 たとえば、有名デザイナーがデザインした靴の3Dデータをインターネットで購入し、自宅の3Dプリンタでつくれるようするのはどうでしょう。私の子どもが4ヵ月くらいのとき、かわいい靴を買ってあげましたが、子どもの成長は早く、1ヵ月もすれば履けなくなるので本当に不経済。もしこうしたサービスがあったら、著作権料の支払いは必要でしょうけど、成長しても子どもの足を再スキャンすれば、いつでもサイズはピッタリです。

 こんなサービスが近い将来、続々と登場してくるでしょう。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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