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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

3Dプリンタの進化と普及は
日本がイノベーションを起こすビッグチャンス!

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第2回】 2014年8月18日
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3Dプリンタによって
何が変わるのか

 では、3Dプリンタがより進化し、普及してくれば、何がどう変わるのでしょうか。

 まず、前述した靴の例のように、消費者がインターネットで取得した3Dデータを用いて、3Dプリンタで製品をつくれるようになるため、メーカーと消費者の距離が近くなります。今の技術では、誰でも手軽にコピーできる複写機ほど操作は簡単ではありません。スキャニング、3Dデータ作成・編集、複製(印刷)と、各段階でシームレスな統合が必要です。しかし、いずれもっと使いやすいハードウェアやソフトウェアが出てくるでしょう。

 そうなれば当然、運送・発送の需要が少なくなります。在庫コストや在庫管理の負担も減るでしょう。ワイングラスのような割れ物を海外に送る場合も、厳重な梱包や発送は不要。3Dスキャナーでワイングラスをデータ化し、メールで送信、受け取る人が3Dプリンタを使って復元すればいいわけです。今、ロジスティックが注目されていますが、物流会社にとっては厳しい時代が来るかもしれません。

 また、「ビスポーク(bespoke)」(オーダーメイド)も進むでしょう。Tシャツも靴も日用品も、好みに合わせて自分にピッタリのものをつくれるようになります。オーダーメイドというと高級品でしたが、3Dプリンタを使えば、いくらでもカスタマイズできます。

 実際、3Dプリンタで作成とまではいきませんが、3Dスキャナーを使ったジーンズの販売をボストンのデパートで見たことがあります。腰と足回りをスキャンしたら、2~3時間後にオーダーメイドのジーンズが完成。すでにファッションの世界にまで3Dの技術が入り込んでいるわけですね。

 従来の金型などでは実現できないような“複雑な形状”もつくることができます。設計に変更が生じても、3Dデータを変えるだけでOK、同じ機械で修正も製造も手軽にできてしまいます。

 何個つくっても1つあたりのコストは変わらないため、大量生産で単価を安くするという規模の経済は働かない。しかも、精巧で複雑な細工が必要な製品もシンプルな形の製品も、材料費が同じなら、かかるコストは同じです。

 さらに、環境にやさしいというメリットもあります。たとえば、円盤をつくる場合、これまでは四角い板から円をくり貫き、残りを捨てていました。しかし、3Dプリンタは積層しながら立体物をつくり出しますから材料のムダが一切出ません。

日本の今の“ものづくり”で大丈夫?

 以上のように3Dプリンタにはいくつものメリットがありますが、私がそれを実感したエピソードをここで紹介しておきましょう。

 私は最近、仕事で特殊なタグをつくるため、日米の2つの会社に試作品の製作を頼んだことがありました。

 完成した両社の試作品をみると、性能は日本の会社のほうが優れていたものの、どちらもデザインがイマイチ。そこで再度、要望を伝えてトライしてもらったのですが、米国の会社は3日でつくってきたのに対し、日本の会社はなんと3ヵ月もかかったのです。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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