ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

3Dプリンタの進化と普及は
日本がイノベーションを起こすビッグチャンス!

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第2回】 2014年8月18日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
5

 話を聞いてみると、「金型を起こすのに時間がかかった…。何万単位では少なすぎる、何十万単位でないとペイしない…」と言うんですね。一方、米国の会社は「3Dプリンタだから、注文はいくつからでもOK」です。私がどちらの会社に仕事を頼んだか、もうお分かりですね。

 日本では今、比較的生産しやすい製品は新興国で大量生産し、国内では高度な技術を要する製品の多品種少量生産が主流となっています。しかし、これまで見てきたような世の中の流れに照らし合わせてみると、日本で今進められている“ものづくり”が、何とも危ういものに見えてきませんか?

3Dプリンタの付加価値連鎖で
勝機を生み出せ!

 では、日本はどこに勝機を見出すべきなのでしょうか。

 日本のものづくりは、まだバーチャルなデータを立体物に戻すという発想に追いついていません。日本がこの分野でリベンジを目指すなら、進化していく3Dプリンタが巻き起こすバリューチェーン(付加価値連鎖)を積極的に取り入れていくべきです。そこで重要なのが、サイエンスとエンジニアリングに加え、デザイン力。パーツ屋ではなく、オンリーワンの製品・サービスを開発し、コスト競争に巻き込まれないことも重要です。

 それにはまず、前回の繰り返しになりますが、失敗を恐れずにチャレンジすること。私はこれまで1万社を超えるベンチャー企業を観察してきましたが、そこから得たのは、優秀な企業は成功するまでに何度も失敗し、それをその後の成長につなげているという法則です。

 幸い、3Dプリンタは失敗してもコストが知れているため、立ち直れないほどの痛手は受けません。何年も修行したり、師匠について学ぶ必要もありません。誰でも自由な発想でトライすることができるのです。

 クラウドソーシングを活用すれば、多様な人の意見を簡単に聞くこともできます。1+1を3、あるいはそれ以上にする開発が行えるかどうかが、これからのビジネスのポイントです。たんにデータを引っ張ってくるだけでなく、どうつなげるのか。さまざまな分野の専門家の知恵を結集させれば、面白いアイデア、ビジネスモデルがたくさん生まれてくるでしょう。

子どもの創造性を刺激する
格好の遊び道具にもなる

 大人の社会だけでなく、子どもが失敗しながらものづくりを学ぶための道具としても大いに期待しています。

 私は子どもの頃、パソコンをオモチャにして遊んでいましたが、10歳のときに、ある大手金融機関からプログラムを書く仕事を請け負いました。住宅ローンの金利を計算する簡単なプログラムでしたが、それを理解したのは後になってからのこと。私はゲーム感覚で、社員とミーティングを重ねながら2年がかりでプログラムを完成させました。好きなことに取り組み、それが認められて対価を得られるということは大きな喜びであり、世の中を知る一歩ともなりました。

 これから学校や図書館、一般家庭に3Dプリンタが普及していけば、私にとってのパソコンだったように、子どもたちの創造性を刺激する格好の遊び道具になるのではないでしょうか。

 3Dプリンタは、大人も子どももたくさんのプロトタイプをつくりながら技術を積み重ねていける、大きな可能性を秘めた道具です。これを活用して、80年代に世界を席巻した日本のものづくりの力を蘇らせるべき! 今こそ、そのビッグチャンスなのです。

※ご意見・ご感想は、齋藤ウィリアム浩幸氏のツイッター @whsaito まで。

(構成/河合起季)

previous page
5
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

⇒バックナンバー一覧