中国 2014年11月6日

これから10年、中国もアジアも激動する。
そのなかで起業家はなにをなすべきか?【第2回】

お金儲けの神様「邱永漢」人生最後の弟子で、2005年より中国四川省成都に在住。日本生まれの韓国人で、現在はグループ会社3社の社長兼取締役を勤める金さんが、中国バブルの行く末を考えます!

 日本のメディアを海外から眺めていると、どうも日本人は中国のバブルを語るのが好きなようです。いやもっというと、日本のメディア(もしくは一部国民)は中国のバブル崩壊を心から待ち望んでいるようです。

 感情としてはわかります。最近の中国は、ちょっと調子に乗ったガキ大将のような振る舞いが多く、国際社会においていろんなところでトラブルを起こしているのですから。そんなわがままなガキ大将を見守るクラスメートとしては、石につまずいて膝小僧から血を出す様子は、それみたことかと気持ちのいいものです。

 これがメディアに煽られた日本の国民感情でしょうが、もうすこし客観的に見てみましょう。

バブルとは何か?

 「中国」「バブル」というキーワードでググってもらえればわかると思いますが、中国のバブル崩壊をメディアが騒ぎはじめたのは2010年ごろからです。つまり、もう4年間も「もうすぐ中国がコケルぞ」と騒いでいるわけです。本当に起きるのでしょうかね?

 「ところで、バブルってなんでしたっけ?」

 バブルという言葉をちゃんと説明できる人は少ないのではないかと思います。私が目下気に入っている説明は、「バブルとは、一国の経済の実質価値と表面価格の差が開きすぎた時に起こる調整現象」というものです。

 不動産でいえば、物件(皆さんの住まいの近くにある商業ビルを想像してください)の購入価格は、本来その物件が持つ価値、つまり収入=運用利回りに応じて決まります。当たり前の話ですが、儲かる物件は値段が高く、儲からない物件は値段が安くなるはずです。

 日本の80年代バブルでは青山の一等地が坪1億円を超えましたが、その1坪を運用(その土地を駐車場にしたり、建物を建ててお金を稼ぐこと)して得た1年間の利益(=利回り)を見るとまったく割に合いませんでした。

 利回り10%を期待するなら、1億円の土地が投資家にもたらす利益は年間1000万円なくてはなりませんが、実際は100万円にも満たなかったのですから値段が下がらないとおかしい。しかし当時の日本では、その原則に反して値段が上がっていったわけです。「日本経済はこれからもっとよくなるだろう」という期待によって。

 こうして(表面的)「価格」と(実質的)「価値」との乖離が大きくなってくると、「ええ加減にせい」と調整が起こるわけです。バブルとは、価格と価値の差が開きすぎた時にそれを調整するメカニズムだとして、では中国はどうなのかを考えてみたいと思います。

 わかりやすい例として、私が住む成都のマンション(実話)で考えてみましょう。

 友人のAさんは、2008年に150平米のマンションを1平米1万元、つまり150万元(約2500万円)で購入しました。その後5年ぐらいでこのマンションの価格はちょうど2倍、300万元(約5000万円)に上がりました。この価格に対し、マンションの実態としての稼ぐ力があまりに弱ければ、中国(もしくは成都)のバブル発生指数は高い、といえるわけです。

 では、現在300万元のこの物件が持つ稼ぐ力とは?

 Aさんは過去1年間、たまたま日本人の借り手がいたので、1カ月1万2000元(約20万円)の家賃を受け取ることができました。1年間の収入は=1万2000元/月×12カ月=14万4000元(約230万円)ということになります。ここからこのマンションの利回り(表面利回り)を計算します。

144,000÷1,500,000=0.096→約10%の利回り

 意外にもこのマンションが稼ぎだす力は、きわめてまともということになります。ただ話はそこまで単純ではなくて、仮に地元の人(中国人)に貸すと家賃は約半分、利回り5%になります。

 ではここから、中国の不動産市場はバブっているといえるかどうか?

 中国を訪れた人が真っ先に思いつくのは、あちこちで見かける「あんなにマンションが建っていて住む人がいるんだろうか?」という風景。友人Aさんは運良く(日本人の)お客さんがついたからまともな利回りが出たけれど、実はマンション購入後、お客さんが見つかるまで3年間空き家だったのです。すると、4年間の平均利回りを単純に4で割れば、利回りは2%前後に落ちてしまいます。

 ここから言えることは、民間住宅市場では、買う時期を間違えなければ賃貸で銀行預金並みの3%程度の利回りは期待できるものの、根本的な問題として、借り手がほとんどつかないのですから、ここに着目すれば価値と価格にはある程度の乖離が見られるといえます。

 この問題をキチンと検証するためには、「借り手がついているマンションの平均利回り」×「借り手が見つかるマンションの割合」を見なければいけませんが、(私の肌感覚では)すくなくとも成都の民間住宅市場では、受給バランスが完全に破綻したバブル状態とまではいえないと思います。 

成都新市街の高層マンション群【撮影/AIC】

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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