フィリピン 2014年8月18日

“原発難民”の母子10人を案内するもっとも忙しい1週間

フィリピン在住17年。元・フィリピン退職庁(PRA)ジャパンデスクで、現在は「退職者のためのなんでも相談所」を運営する志賀さんのフィリピンレポート。今回は、日本の放射能汚染逃れて、母子でフィリピン移住する家族たちのレポート。移住希望者の数はまだまだ減っていないという。

 2011年3月の東日本大震災と福島原発事故を受けて、子どもを連れてフィリピンに移住する日本人家族が増えていることは以前書いた。フィリピンが選ばれる理由は、原発がないこと、欧米に比べて生活費が安いこと、教育が英語で行なわれることだ。

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 こうした“原発難民”の流れは現在も続いていて、そのおかげで(?)これまで知らなかったいろいろな体験ができた。今回は、子連れの移住手続きがどのように進むのかを紹介してみたい。

思わぬ伏兵はウンチ

 2013年9月の第2週は、パスコ史上、もっとも忙しい週となった。

 今回の主役は4人のお母さんと2歳から8歳まで6人のお子さん、総勢10人だ。マニラ空港への到着は夜の11時、ピックアップは午前0時近くとなり、ホテルに送って帰宅したときは午前1時を回っていた。

 10人ともなると迷子が出る恐れがあるので、翌日はキム(相棒ジェーンの義理の娘で高校生になった)を同行し常に一行を後ろから見守るよう言いつけた。

 初日は銀行口座開設とクリニック、送金手続き、不足書類の準備などで、通常、半日で終わるところだがたっぷり丸一日を見込んだ。クリニックにしても10人が受診するとなると、いつもとは桁違いの時間がかかる。

 万全の準備をしたつもりが、クリニックで思わぬ伏兵となったのが子どもたちのウンチだ。数カ月前に申請用紙が変更され、従来の健康診断書兼申請用紙は使えなくなり、新しい健康診断書には便、小水、血液検査などが追加された。ところが子どもたちにはそう簡単にウンチを出してもらえない。仕方なく、後日提出にしてクリニックを後にした。

 このウンチは、排便後1時間以内に病院に届けなければならない。こうして時と場所をわきまえないウンチに振り回されることになった。

 クリニックの待ち時間に書類に記入してもらったおかげで、銀行口座の開設はスムーズに進んだ。その間、子どもたちは銀行員の机の上で遊びだす始末。支店長はiPadを持ち出して親子全員で記念撮影。もちろん支店長も加わってポーズをとる。日本の銀行では考えられないだろう。

子どもたちが机の上に座って遊んでもいても、笑顔で対応する銀行員にお母さんたちは感激していた【撮影/志賀和民】

 次は事務所に戻って送金手続き。事務所のWifiを使って、日本で待機しているご主人に連絡をとり、銀行口座などを伝えて送金を依頼する。しかしそのときは日本時間で午後2時を回っており、送金手続きは翌日になってしまった。

 ひとりは香港のHSBCからネットバンキングで送金しようとしたが、なかなかうまく行かない。結局、用紙を送ってもらい、翌々日、ファックスを銀行に送り、さらに電話で確認する羽目になった。だが驚いたことに、手続きの終わった翌日にはもう入金していた。どうやら海外から送金したほうが、日本からよりも早いようだ。

 事務所は6人の子どもたちにKIAN(ジェーンの息子)も加わって幼稚園状態になり、喧騒のうずの中での作業だった。

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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