中国 2014年8月20日

終戦記念日に老人から聞いた日本への複雑な感情

2006年に中国に移住した大橋さん。蘇州、北京、広州、そして08年からは上海に在住。情報誌の編集長を経て13年9月よりフリーランス。今回のテーマは、終戦記念日にあらためて感じた中国人の複雑な対日感情と、留学によって国際的視点をもつ新しい中国人たちの登場。日中関係の未来はどうなっていくのだろうか。

 終戦記念日の8月15日、たまたま中国人との会食に誘われた。経営者が中心の集まりだったが、私の隣りに座った王さん(仮名)は、外交部のOBだった。英国、アイルランド、ブラジル、香港など在外公館に赴任した経験もあるという。

外国人との交流が許されなかった30年前

 王さんの昔話は興味深いものだった。30年ほど前、日本の政府開発援助(ODA)のプロジェクトで上海に滞在していた日本人ふたりとの思い出が語られた。ODAの存在を知る中国人は非常に少ないが、外交部に所属しているとさすがに違うようだ。

 その日本人ふたりから日本語を教わったり、逆に中国語を教えたり、一緒に卓球をしたりして交流したのだという。当時の記憶をたどりながら王さんは「はじめまして。どうぞよろしくお願いします」とうれしそうに日本語を口にした。

 30年前というと、改革開放から間もない頃である。そのことを指摘すると、実際には「開放なんてまだぜんぜんだった」と即座に否定された。

 彼が外交部の人間だったこともあるのかもしれない。日常生活において外国人、まして日本人と接触することは、本来であれば許されないことだったという。まだ文化大革命の名残りがあったのだ。

 私の義父は公務員であるが、公務員の子女が外国人と結婚することも当時は許されなかったという。中国のこの30年間は経済だけではなく、社会の変化も甚だしいものがある。

 酒の酔いも手伝ってか、話題はしだいに日中関係へと移っていった。それまでは、過ぎ去りし日のよき思い出や日本食が好きなことに触れたりと、日本びいきのところを見せていたが、昨今の日本政府の言動には我慢がならないようで、「正直にいうと、日本製品を買おうと思わなくなった」と唐突に漏らした。隣で奥さんが慌てて「個人と国家の問題は別だから」とたしなめていたが、それまでの会話が和やかだっただけに、少なからずショックを受けた。

 しかしよくよく考えてみると、これが戦争を体験している親を持つ世代の普通の感覚なのかもしれない。表面的には親日であっても、心の奥底には日本に対し割り切れない思いを持っているのではないか。


橘玲の書籍&メルマガのご紹介
世の中(世界)はどんな仕組みで動いているのだろう。そのなかで私たちは、どのように自分や家族の人生を設計(デザイン)していけばいいのだろうか。
経済、社会から国際問題、自己啓発まで、様々な視点から「いまをいかに生きるか」を考えていきます。質問も随時受け付けます。
「世の中の仕組みと人生のデザイン」 詳しくは
こちら!
橘 玲の『世の中の仕組みと人生のデザイン』 『橘玲の中国私論』好評発売中!

バックナンバー

»関連記事一覧を見る

海外投資必勝マニュアル&本

海外投資のノウハウが凝縮! ここで紹介しているコンテンツ、書籍はすべて、ネットから購入が可能です。さらに「海外投資実践マニュアル」は「海外投資を楽しむ会」の会員になれば割引価格で購入可能です。

作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
橘玲×ZAiONLINE海外投資の歩き方
作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
subcolumn下影

ページのトップに戻る

本WEBサイトに掲載している全ての記事およびデータについて、その情報源の正確性・確実性・適時性を保証したものではありません。本サイトの提供情報を利用することで被った被害について、当社および情報提供元は一切の責任を負いませ ん。万一、本サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社および情報提供元は一切責任を負いません。本サイトからアクセス可能な、第三者が運営するサイトのアドレスおよび掲載内容の正確性についても保証するものではなく、このような第三者サイトの利用による損害について、当社は一切責任を負いません。また、併せて下段の「プライバシーポリシー・著作権」もご確認ください。