林修が伝えたい<br />「生きた人間とつながりのある毎日を送る」必要性<br />【林修×井上公造対談】(後編)<br />

 これは僕自身の資質の問題もありますが、「みんなで食事をするのがいい」というくだり。僕は絶対に1人がいいんです(笑)。予備校講師というのは、1人で考えながら授業を作っていく仕事なので、人から多くの情報を引き出す井上さんの仕事とはかなり違いがある。でも僕的には、そこが逆に興味深くて、「面白いな」と思いながら読みました。

井上 人前でしゃべる仕事としては一緒なんですけど、先生という職業は専門分野を教える立場であり、自分の中でカリキュラムを組むことができますよね。僕らは、よそから集めてきた情報でカリキュラムを組まなければならない。でも、世の中的には先生のほうが特殊な専門職であって、大半のビジネスパーソンは僕寄りだと思うんです。彼らは、さまざまな情報を取得しないとならないだろうし……。

 普段の僕は、周りに人がいると、すぐ「あっちいけ!」と言ってしまうんですよ(笑)。1人の時間を奪われるのがとにかく嫌なんです。

林修が伝えたい<br />「生きた人間とつながりのある毎日を送る」必要性<br />【林修×井上公造対談】(後編)<br />

井上 アハハハハ。学者、作家タイプですよね。他に違いは?

 「飲み会の席は最後まで……」とありますが、僕は最初に帰るタイプですね。テレビに出させていただくようになって、打ち上げの席はトコトン行くようになりましたけど、心の中では、いつも「早く帰りたいな」と思っています。最後までいることで僕が得るものはあまりないですけど、「あいつ、帰りたそうな顔していたけど、珍しく最後までいたな」という人間の基本的な評価は、たしかに上がるかなと……(笑)。

井上 飲み会の席でいうと、主賓がいっぱい飲まされてベロンベロンになっている場合なんかは、夜中の3時ごろになって、翌日の自分の行動を考えると「これは抜けるチャンスだな」と普通は思うじゃないですか。僕、何度か帰ったことあるんですけど、主賓はちゃんと覚えていることが多いんですよね。不思議と、大物になればなるほど覚えている。翌日の電話で、「お前、何時に帰った? あれからネタの宝庫だったんだぞ!」と言われると、仕事柄、もう悔しいというか後悔ですよね。

 僕はいつも「なんで最後までいたんだろう?」が多いですね (笑)。ところで、ネタバレになってしまうのであまり詳しくは語れませんが、この本の中には、対タレントさんとのエピソードでも、思わず共感する具体的な失敗談がたくさん出てきますよね。トークテクニックとしては、「予想だにしない質問で、素顔をむき出しにする」。これも、一般の方はなかなか思いつかないハイレベルなテクニックですよ。

井上 そうですね。成果を得るまでに時間はかかるかもしれませんが、知っていれば絶対に役立つときがくる。この技は仕事に恋愛にフル活用できると思いますよ。

 よく考えると、ドラマ「相棒」(テレビ朝日系)で、杉下右京がしょっちゅうやっていることなんですけどね(笑)。右京は、わざと相手を刺激して怒らせたり、質問が終わったと見せかけて、「最後にあと1つ!」と仕掛けたりするんですよ。相手がゆるんでいるところに投げかけるから、思わず本音を吐いてしまう……。こうして考えると、いっぱいハウツーがありますよね。