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父と娘の就活日誌

就活の「自己分析」は本当に意味があるのか?

――未来は人との出会いによって打開される

楠木 新
【第14回】 2008年1月30日
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「大型書店の就活のコーナーには、『自己分析』の本が一杯並んでいるね。驚いたよ。昔は『自己分析』なんて誰も言わなかったけどね」

「『自己分析』、って何をするの?」

「小さい頃からの自分を振り返り、今まで、どういう経験をして、一体自分は何に向いているのかを確認する訳だ」

「それによって働く意味を考えたり、エントリーシートを書く材料にするんだよ」

「昔、流行った『自分探し』ね。普段は、そんな機会はないからやってみたらいいんじゃない。裕美は、もう取り組んでいるの?」

「まだなの。そろそろやろうと思っているけど」

「なぜ気が進まないのかな?」

「自分のことを突き詰めても意味があるのかなぁ。就活をしている人と話した方が気づくことが多いよ」

「たとえば?」

「今までは、自分の身近にある商品を作っている会社がいいと思ってきたけど、それって結構、上っ面だけなの。本当は、その商品を生み出す力や、社会にどのように受け入れられているかが大事だと思ってきたの」

「たしかに、他の人に話を聞いてもらうことは大事だね。お父さんも自分の内面を見ても何もない(笑)。ただ、学生仲間だけで話すのもいいけど、就活では、普段周りにいない人と話すのが大事だと思うよ。会社で働くことも、就活も学生にとっては未知の世界だからね」

 実は、私はキャリア・コンサルタントの資格を持っているが、学んだテキストには「自分自身を洞察して『自己理解』(自己分析に近い:筆者)を行い、職業情報を把握する『仕事理解』を経て、そして『意思決定』する」とある。

 以前にも述べたように、私は仕事観に関する長時間のインタビューを続けている。サラリーマンから転身した人200名にご協力いただいた。彼らが自らのキャリアを変えるプロセスは、このテキストの内容とは大いに異なる。

 大半は計画的な意思決定ではなく、行動や人的ネットワークの変化自体が次のステップを少しずつ明確にする。小さくても新たな具体的行動を行い、今までとは異なる人に出会うプロセスが重要なのだ。自分の内面を見つめたり、性格や行動様式を特徴づけることで得られるものは多くない。論理よりも行動が先なのである。人は、頭で考えて新しい行動様式を身につけるよりも、行動して新しい思考形態を見出すほうが自然なのだ。

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楠木 新

金融機関に勤務するかたわら、「働く意味」をテーマに執筆、講演などに取り組む。12万部を超えるベストセラーになった『人事部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)、『就職に勝つ!わが子を失敗させない「会社選び」』(ダイヤモンド社)など著書多数。近著に『人事のプロが教える 働かないオジサンになる人、ならない人』(東洋経済新報社)がある。


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