正しい目標を掲げ「あなたの地位も安泰ではない!」と告げよ

 ビジネスで『君主論』を使う場合、典型的なケースは次のようなものです。

・組織と人を動かし成長させる「正義」を掲げ、指導力の基礎とする
・いままで地位が安泰だと思いのんびりと過ごした人たちに「あなたの地位も安泰ではない!」と告げて発奮させる

 京セラの名誉会長で、日本航空(JAL)を再生させたことでも有名な稲盛和夫氏は、会社の理念を「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類の進歩発展に貢献する」と決めたあと、はじめて社員を叱ることが可能になったと著書『こうして会社を強くする』で述べています。

 それまで社員が働くこと自体が正義だったのですが、理念を決めたあとは、理念に一致しない働き方に対して、「怠けていると厳しく叱る」ことができたのです。

 衣料品のユニクロ(ファーストリテイリング)を世界企業に育てた柳井正氏も、非常に厳しい経営方針、人材へ高い期待をかけることで有名ですが、その正義は「グローバルで戦える企業となる」ことです。この目標に沿った働き方であるか否かで、ユニクロ内では従業員への対応をより厳格にし、高い基準を社員に課しています。

「君主は自ら仕掛けよ」とはマキアヴェリの言葉ですが、現代ビジネスでも、非情であっても正しい目標を掲げなければ、人と組織は動かせないことが多いのです。何もしないリーダーに統率力はありません。正しい目標を掲げることは、時に厳しさと映りますが、組織に指針を与え、目標へ動かすため必要なことなのです。

 目標がなければ必ずぬるま湯が生まれます。古株の社員さえも「安泰ではない」と焦る新たな目標を掲げるなら、怠惰を許さず全力疾走させることができるのです。これを非情、冷たさと考えるのは、『君主論』が説く現実がわかっていない証拠です。愚かなリーダーが、優しさや甘さで国家や会社を潰したとき、そこにいる人はすべて殺されるか、路頭に迷うことになるのですから。