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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

トヨタがテスラを脅威に感じる日はそう遠い将来ではない

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第20回】 2009年7月7日
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 電気自動車の開発が米国各地で進んでいる。ここシリコンバレーではテスラ・モーターズが既に量産体制に入っている。量産とはいっても週10台の生産だが。筆者は先日、同社のスポーツカーRoadstarの見学会に参加した。運転はさせてもらえなかったが、静かな出足、加速の良さにはびっくりした。たった4秒で時速100キロになる。一回の充電で350キロ走る。価格は1000万円(1ドル=100円)と高いが、すでに500台完売している。

 創業者のエロン・マスクは、インターネットを使って小口支払いサービスを行うベンチャー企業PayPalを立ち上げ、それをeBayに売却して大金持ちになった人物である。元々自動車業界とは無縁の事業家であったが、新しい仲間と試行錯誤を繰り返しながら、自前の生産工場を完成させた。

 Roadstarの次には4人乗りセダンを生産する計画で、シリコンバレー南端のサンノゼに新工場用地を手当てしている。セダンは500万円で販売するとしており、すでに予約が入っているとのこと。同社はこれまでベンチャーキャピタルと創業者から180億円の投資を受けてきたが、新工場の建設には250億円かかる見込みで、これを賄うために連邦政府に低利の借入を申し込んでいる。

 テスラを追うように、同じカリフォルニア州のアーバインで電気自動車の開発を進めている会社がある。フィスカー・オートモーティブである。創業者のヘンリー・フィスカーはBMW、フォードで車の設計を担当してきたデザイナーで、2005年に独立して以降、すでに2種類の車を作っている。こんど手掛けようとしているのはプラグイン・ハイブリッド車である。ガソリンエンジンを持った電気自動車であるが、発電用だけにガソリンエンジンを使うモデルで、プリウスとは方式が異なるハイブリッド車である。それでも1回の充電で460キロ走るという。

 同社のもう一つの特徴は、部品のすべてをアウトソーシングしていることである。たとえば、エンジンとドア・システムはGMから、照明関係はフランスの部品会社、組み立てはフィンランドの生産受託会社、インテリアはカナダの生産受託会社、電池もカナダのメーカーといった具合に国際分業体制を敷いている。安全検査と衝突実験までもドイツの専門会社に委託している。委託先はいずれも名の通った専業メーカーである。

 同社の正規社員は100人もいない。ミシガン州に200人ほど擁する設計・エンジニアリングセンターを置いているが、その大半は契約社員である。これで新車の開発コストを通常の2/3に抑えることができるとしている。すでにベンチャーキャピタルが200億円弱の投資をしている。同社の生産はまだ試作品の段階であるが、今年11月に最初のスポーツカーKarmaを880万円で販売開始する計画でいる。

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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ


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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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