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医療・介護 大転換

特別養護老人ホーム入所は中重度者を優先
介護大変革が待機者52万人を直撃する

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第6回】 2014年8月27日
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 これまでの連載では、4月から始まった新しい診療報酬を点検しながら、医療改革を検証してきた。実はその一方、介護でも大改革が始まろうとしている。介護保険制度が2000年4月からスタートして15年。3年ごとに制度の見直しを行ってきたが、今回は「地域医療・介護総合確保推進法」を特別に作って制度を見直そうとしている。それだけ大きく、大事な改革だということだ。介護保険の基本理念を覆す方向転換と言っていいだろう。

 改革は4点に及ぶ。

①特別養護老人ホーム(特養)の入所者を要介護3以上の中重度者に限定 
②特養入所者への居住費や食費の補助を縮小 
③一定以上の所得があればサービス料を1割負担でなく2割に 
④軽度の要支援者の受ける訪問介護と通所介護(デイサービス)を国でなく市町村が管轄する――。

 いずれも、介護保険サービスを縮小する措置である。高齢者数が増えるとともに要介護者も増加し、介護サービスの給付額が増えていく。そのスピードに投入する税金や利用者負担金が間に合わないため、サービスを抑制することにしたのだ。

2025年、介護費用は21兆円に倍増
消費増税、保険料アップでも賄えない!?

 介護保険制度が始まった2000年度の介護費用は3兆2427億円で、2012年度の8兆1283億円と比べると、12年間で2.5倍になったことを厚労省はこの4月に最新データとして発表した。2025年度になると21兆円へと倍増する。そのため、保険料を現在の月約5000円から8200円程度に増やさざるを得なくなる。

 しかし、総費用を賄うための消費税の投入と保険料のアップでは補填できず、限界に近づきつつあると見て、費用削減へと大ナタを振るう改革に及んだ。そこで出されたのが、冒頭で挙げた4点の改革だ。③で年間740億円、②で年間690億円、計1430億円の抑制効果が期待できる。ただし、それも10兆円を超える現費用の1%強に過ぎない。保険料の抑制効果も1人当たり月に57円にとどまる。

 介護費用の急激な伸び率は、当初から人口統計で十分に予測できていたこと。もっと早くからサービス抑制を訴えるべきだった。あるいは、サービス抑制をできるだけ避けるために、保険料の大幅値上げを提言する道もあったと思う。

 野党は「消費税を増税して全額を社会保障費に回すとしながら、サービスのカットはおかしい」とこぞって反対した。だが、与党が多数を占める国会では原案通りの「地域医療・介護総合確保推進法」は成立した。

 いずれにしろ、決まったこと。以下では、それぞれの内容を検分していく。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

「医療・介護 大転換」

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