コンサル出身者が事業会社に転職した際の
泥臭い経験の乏しさは問わない

並木 ではここから本題に入りましょう。コンサル出身者を採用する時に見るのは、どんなポイントでしょうか。

川邊 前職での経験の深さや広さを評価しますが、やはり一番気になるのは、なぜコンサルを辞めてヤフー・ジャパンに来たいのかというモチベーションの部分です。コンサル時代に比べれば、仕事の幅は狭くなるし、おそらく給料も下がる。それでもヤフー・ジャパンに来たいのはなぜですか、と。もし、コンサルが事業の主体者でないことにフラストレーションを感じ、事業会社に入って事業を深くやってみたいということなら、うちのような会社に来ることでその欲求は満たされるでしょう。

今、10人ほどのコンサル出身者がヤフー・ジャパンにはいますが、いずれもそういう考え方の持ち主です。前職と同じ待遇でコンサルティングと同じ業務内容を引き続き社内で担っていきたいということなら、どうしても不満が生まれてしまうと思いますね。

並木 コンサル出身者の仕事を見ていて、彼らの得意・不得意な部分はどんなところでしょうか?

事業会社に挑戦したいコンサル出身者は<br />経済合理性を捨ててパッションで動こう「合理的に考えると、事業の道を選択できない」(川邊さん)

川邊 当たり前ですが、戦略策定や経営企画の分野には強い。一方、不得意という表現は少し当たらないかもしれませんが、コンサルティング・ファームでは仕事の相手の多くが企業のトップ層だったためか、主に事業運営の面で一般社員との意思疎通であったり、同じ釜の飯を食うといった泥臭い経験の乏しさが出る面はあります。でも、そういう経験をしたくて入ってきた人たちばかりなので、別に問題はありません。

並木 冒頭でお話し頂いた企業買収の仕事では、やはりコンサル出身者の方が関わっていたんですか?

川邊 チームに入っていましたよ。各コンサルティング・ファームの出身者と、それから投資銀行の出身者も。M&Aのフローの端緒から買うところまでを投資銀行系の人たちが、その後のPMI(統合後のマネジメント)や実際に事業を組み立てていく部分をコンサル系の人たちが担当するという形ですね。

並木 なるほど。コンサルタントの中には、いずれは経営者になりたいと考えている人たちも多くいるんですが、実際に経営者になる人は少ない。事業の世界に足を踏み出そうと考えている現役コンサルタントたちにアドバイスはありますか?

川邊 合理的な思考能力をもたないことじゃないですか(笑)。コンサルのままでいた方が給料もいいし、気持ち良く仕事をやっていけるわけで、合理的に考えると事業の道を選択できないと思うんですよ。経済学でも起業家は「リスク算定の甘い人」と明確に定義されているぐらいですから、合理的な判断を捨てない限りは「給料が下がってもいいからヤフー・ジャパンに行ってみよう」あるいは「起業しよう」ということにはならない。やってみたければ、経済合理性を追い求めないで、パッションで動くべきだと思います。