経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2016
【第58回】 2014年9月2日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

【アレン・マイナー氏×武田隆氏対談2】
何をやるかより、誰に賭けるか――。
起業家からインキュベーターへ。方向転換の理由とは

日本のITベンチャーの創世記を支えたキャピタリストの半生

日本のインターネットビジネス黎明期からベンチャー投資業界を牽引してきたベンチャーキャピタル「サンブリッジ」の創業者、アレン・マイナー氏。今回は、日本オラクルの立ち上げに携わり、入社2年目で初代代表を務めたマイナー氏が、経営者からベンチャーキャピタリストへ転身した際の話を伺った。

幻に終わった、
サンフランシスコで一番の日本料理屋

アレン・マイナー
株式会社サンブリッジコーポレーション 代表取締役会長兼サンブリッジグループCEO。日本オラクルの初代代表に就任し、今日の日本オラクル社の急成長の礎を築きあげる。1999年に設立したサンブリッジの代表取締役として、数多くのベンチャー企業への投資に加え、株式会社セールスフォース・ドットコムをはじめとする海外クラウドベンダーの日本におけるジョイントベンチャーの設立にも携わる。2011年より新たに、初期段階からグローバルを視野に入れるベンチャー企業を支援する「グローバルベンチャーハビタット」を立ち上げる。著書に『わたし、日本に賭けてます。』(翔泳社)がある。

武田 前回の対談で、アレンが日本オラクルの立ち上げに携わり、初代代表を務められ、2000年の株式公開時に大きな上場益が手に入ったあたりまで伺いました。そこから次のステップとして、何をされようと思ったんですか?

マイナー ひとつはレストランですね。

武田 えっ、レストラン? これはまたITともデータベースとも関係がない……(笑)。

マイナー 日本オラクルで一緒に働いていた永山(隆昭氏。日本オラクルを経て米国オラクルに勤務後、日本でマイナー氏とともに株式会社サンブリッジを立ち上げた)と、シリコンバレーエリアで一番高級かつ一番おいしい日本料理レストランをつくろう、と盛り上がったんです。

武田
 お二人がIT以外の話をされていたのも意外ですね……。

マイナー 「カリフォルニア懐石」という新しいキュイジーヌをつくろう!なんて言っていたんですよ(笑)。そこで、ネットスケープ出身で仕事をコツコツとこなす女性が社内にいたので、彼女になら実務を任せられると考えてメンバーに誘いました。いよいよ本格的に事業を進めようと、意気揚々とミーティングを始めたら、彼女が「あなたたち、レストランの経験ないでしょ」とばっさり(笑)。

武田 返す言葉もないですね。

マイナー 彼女はさらに「レストランをやるなら、サンマテオあたりでもうちょっと安い焼き鳥屋か炉端焼き屋をやろう。六本木にアレンが気に入っているお店があるし、まずはそこを参考に始めるほうが商売としてかたいでしょう」と言うんです。完璧なロジックで計画を覆されて「そのとおりだ!」と思った瞬間、やる気が完全になくなっちゃいました(笑)。

武田 せっかくカリフォルニア懐石を創りだそうとしていたのに(笑)。

マイナー でも冷静になってみたら、飲食店の経験もない僕らがいきなりサンフランシスコ一(いち)のレストランをつくるっていうのも、とんでもない発想だなと(笑)。そこで方向転換して、今度は1997年頃から考えていた、日本のインターネットビジネスの本格的な立ち上げに関わるという方向を具体的に考えてみました。

武田 レストランからはまた大きな方向転換ですが、私の知っている未来には近づいてきました。

マイナー 当時『Yahoo! Internet Guide』という雑誌に「Web of the Year」という日本のベストサイトを選ぶ賞があったんです。1998年の、EC・有料サービス部門の第1位は紀伊國屋書店のサイトでした。どんなものか見てみたら、当時のユーザーインターフェイスは良くないし、中の仕組みも、新宿の紀伊國屋の在庫を店員が探して、梱包して送るだけのものだった。アマゾンの使いやすさに対してまだこれしかできていないのなら、まだまだチャンスはあるだろうと思いました。

武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


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