オンラインゲームに参加するプレーヤーの目的は、ひとつのストーリーを完遂する、強いモンスターを倒す、プレーヤー同士の交流を図るなど、様々である。現実世界から離れ、無限に広がり続ける匿名の仮想世界で、彼らが目指す“獲物”は多様化を続けている。

 しかし、少なくとも「プレーヤーの知らない間に金融犯罪に加担してしまうようなストーリー」は、存在しないはずである。

 ところが、“事実は小説より奇なり”とはよく言ったもの。実は近年、オンラインゲームでプレーヤーがアイテムを購入するために利用する電子マネーを利用した犯罪が、頻繁に起きているのだ。

 さらに、プレーヤーが組織化して、オンラインゲームが提供する世界でマネーローンダリング(マネロン)を行なう事件も起きている。

 そこで今回は、オンラインゲームで横行する犯罪事例からマネロンの手口についての共通項を見つけ出し、仮想世界におけるビジネスリスクと対策法を探って行く。

急拡大するRPGへの
参加者は今や3人に1人

 オンラインゲームとは、PCをはじめとする携帯型を含む家庭用ゲーム機や携帯電話などを利用し、インターネットを介して行なうゲームサービスである。オンラインゲームでは、国籍を問わず多数の人間が同じ場所に集まり、ゲームプロバイダーが提供する様々なゲームを楽しむことができる。

 オンラインゲームは、チェスやポーカーといったテーブルゲームだけではない。とりわけプレーヤー自身がそのゲームの主人公となってストーリーを進めるRPG(Role-Playing Game)は、絶大な人気がある。

 特に仮想世界にあるRPGは、多くのプレーヤーが集まり様々なストーリーが展開されることから、MMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)と呼ばれ、“多人数同時参加型オンラインRPG”とも訳される。

 インターネットやIT技術の発展に伴い、このMMORPGの拡大がオンラインゲームビジネスの発展を加速したとも言われ、その市場規模は2006年に1000億円を突破し、会員数も4000万人を超えた。(注1)