“代ゼミショック”の本質は「校舎」(不動産事業)ではない、と前回書いた。最初の報道から10日余、続報の多くは「校舎」のその後を巡る話題に終始している感がある。しかし、代ゼミが教育産業から撤退するわけではない。むしろ、これからの教育を見据えての経営判断を行ったのだ。そこを見誤ってはならないだろう。

“代ゼミショック”とこれからの教育

 今、50代から40代のマスコミの編集長、デスククラスは、代々木周辺にあった代ゼミの校舎に1万5000人以上もの浪人生が通った時代にノスタルジアを感じる「予備校世代」である。30代の記者も、まだまだ現役時代に予備校に通ったクチだろう。あの頃、都会に住む、勉強がそれなりにできる高校生にとっては、予備校の現役コースに通うことも重要なファッションの1つだった。だから、「代ゼミ撤退」にショックを受けることは理解できる。

 しかし、報道されている内容を見ていると、どうもその“ショック”を共有することや代ゼミが不動産業に転じるのではないかといったようなことに終始するものがあまりにも多く、もう一歩、突っ込んだり、現在の教育の状況やこれからの教育のあり方を語ったりするものが皆無とすら思える。

【代ゼミショック!~短期集中連載(2)】<br />教育産業の構造変革 代ゼミが進める3つの撤退戦<br />――教育ジャーナリスト・後藤健夫講師に送られてきた「リストラ」の通知は、構造転換の第一歩でもあった
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 まずは、8月20日付で講師のもとに送られてきた文書を読んでいただきたい。

「今後の代々木ゼミナールの事業展開について」と題されているが、そこで強調されているのが、「親身の指導」の原点に立ち返ったサービスの拡充、という点である。
 一方で、「少子化に伴う受験人口の減少と現役志向の高まり」の中で、「これまでのサービスを維持することが困難となり、全国一律の校舎運営、事業展開を根本から見直さざるを得ない状況」に立ち至ったと書いている。

 これは何を意味するのか。

 “代ゼミショック”の本質は、「校舎撤退」ではなく、「私大文系からの撤退」を宣言している点にあるのだ。