フィリピン 2014年9月13日

夫婦のまま別居して別の家庭をつくるのが当たり前
フィリピン人の結婚観

フィリピン在住17年。元・フィリピン退職庁(PRA)ジャパンデスクで、現在は「退職者のためのなんでも相談所」を運営する志賀さんのフィリピンレポート。離婚制度のないフィリピンでは法的に結婚したまま、別の家庭を持つのもごく当たり前。結婚制度が無用の長物になる日が来るかもしれない。

 日本の熟年独身男性が老後のパートナーを求めて、若いフィリピーナと結婚をするケースはいまだに多い。自分より二回りや三回りも年下なら先に死ぬことはなく、しっかり介護もしてもらえるというなんとも身勝手な理屈だ。

 一方のフィリピーナは、日本人と結婚すれば日本に行けて、フィリピンに残された家族の生活も面倒を見ることができるというけなげな覚悟=打算で結婚に踏み切る。さらに、どうせたいして長生きもしないだろうから、いずれ晴れて自由な身になり、新しい夫を見つけてバラ色の人生を歩めるという淡い夢を見ている。

 お互いの目論見=打算が一致して結婚に至るが、果たしてそんな結婚生活がうまくいくのか多いに疑わしい。しかしまさに、この形式婚を2人の努力でいかに実質婚に熟成させるかが鍵だ。

フィリピン人にとって、家族とは両親、兄弟、自分と兄弟の配偶者、自分と兄弟の子供達と範囲が広く、軽く20~30人に達する。ファミリーメンバーの関係も、実質、形式、血のつながり、成り行きなどさまざまだ。彼らは運命共同体として助け合って生きていく【撮影/志賀和民】

離婚制度がないフィリピン

 フィリピンには離婚という制度がない。アナルメントという「裁判官がその結婚が不当で初めから存在していないと判定した場合、婚姻を解消できる」という制度はあるが、数百万ペソ(1ペソ=約2.4円)の費用と数年の歳月を要するため、よほどのお金持ちでないと離婚はできない。だから実質的に離婚・別居している夫婦が、それぞれ別の家族を持って生活しているというややこしい夫婦がたくさんいる。

 一方、離婚はできないとか、夫婦の資産は共有とか、面倒な規制がある法的な結婚(形式婚)を嫌って、はなから実質婚を選ぶ傾向もある。実質婚でも家族を形成し、普通の結婚と同様の家庭生活を送り、子どももつくる。お互いの家族との交流もなんら変わるところがない。これは両者がある程度の社会的ステータスがある場合などに見られるようだ。

 そもそも法的な結婚とは何なのか。結婚生活が破綻して離婚という羽目になったときの離婚調停やら、夫婦の憎悪と確執はいったい何なのだろう。もともと実質婚であれば、恋人同士が別れるときのように、しばしの涙ですんでしまうだろう。

 ここで参考までに、私のビジネスパートナーであるジェーンの兄弟を例にあげてフィリピン人の結婚生活を紹介しよう。日本人からすると奇妙に思えるだろうが、これはけっして特異なケースではない。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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