昨日(4月22日)、光市母子殺害事件の差し戻し控訴審の判決が出た。広島高裁は元少年の容疑者に「死刑」を言い渡し、裁判は事実上終結した。

 1999年の事件発生から約9年、最愛の妻と娘を奪われた本村洋氏の苦悩の一部がようやく解放された。

 それにしても、この裁判は、なぜここまで迷走してしまったのだろうか。流れを簡単に振り返ってみよう。

 18歳の元少年に対する一・二審判決は、その罪状を認め、反省の色も窺えた事から、被告人に「無期懲役」の判決を下した。

 ところが2006年、最高裁が量刑不当により控訴審に差し戻すと、すぐさま被告弁護団が結成される。その後、橋下徹弁護士(現大阪府知事)がテレビ番組(『やしきたかじんのそこまで言って委員会』)で、これら21人の弁護士の懲戒請求を呼びかけ、さらに混乱が広がった。そして、弁護団内部でも抗争が勃発し、主任弁護士の安田好弘弁護士が、今枝仁弁護士を解任するなどして、法廷外での「乱闘」に発展した。また、その乱闘直前には、今枝弁護士が感極まって記者会見中に泣き崩れるなど、これを報じるテレビ局側にも格好の材料を提供した。

 こうしてこの裁判は、とくにその後半、裁判そのもののよりも、報道のあり方、とりわけテレビメディアの暴走が目立つようになってくる。

事件を煽り感情的報道に
終始したマスメディア

 通常、裁判は裁判所が主宰し、被告人と弁護士、被害者と検察などの「登場人物」がそれぞれの役割を果たしながら、判決確定にまで至る。

 ところが、今回の裁判は、そうした本来のあり方から大きく逸脱し、死刑反対派とレッテルを貼られた弁護団と、残虐性と幼児性の混在した被告人の異常な発言ばかりに焦点が当たってしまった。それを報じるメディアも、全体像の検証にまで至らず、結果として「素材負け」をした感が否めない。

 判決の夜、元少年と数十回に及ぶ接見を繰り返した末に解任された、今枝弁護士が筆者のキャスターを務める報道番組「ニュースの深層」(朝日ニュースター)に生出演して、率直な感想を語った。中でも、やはりメディアの報道のあり方については強い調子で疑義を呈した。