『もうひとつの大きな特徴は、「地下深くに浮遊する宇宙船」として、これも3層を貫くようにイメージされた卵形のシェル。「卵の殻」が構内のところどころに現れ、新駅のシンボルになっている。もともと打放しコンクリートが想定されていたシェルには、構造上・施工上の理由から、軽量のGRC(ガラス繊維補強コンクリート)が用いられたが、その内部が空洞であることを利用し、そこに冷風を送って輻射冷房の機能を持たせている。ホーム階の床と天井の内部にも輻射冷房用の冷水管が備えられ、吹抜けによる自然換気と合わせて、環境に配慮した空調システムが実現した』

 おわかりのように、ベタ褒めだ。

 私たちが邪魔くさいと思っている吹き抜けは、プロに言わせれば「空間のダイナミズム」で、こんなところで宇宙船だの何だのと言ってるから使い勝手が悪いんだばか野郎、何なんだこの通路の狭さは、と感じる設計を、プロたちは「地下深くに浮遊する宇宙船」だの新駅のシンボルと称している。ばかなのか、こいつら? 安藤某に金でももらって書いているのか? それとも、弱みでも握られているのか?

 だが、おそらくは、これが利用者と設計施工業者との感覚の違いだ。

 安藤忠雄氏が何を思ってこんな設計をしたのか、アマチュアの私には知るよしもないが、プロのべた褒めを見るかぎり、デザイン性とか、世界に例がないとか、環境に配慮とか、ダイナミズムをとかく意識したみたいだが、利用者の気持ちはどうやら置き去りのようだ。二〇二〇年の東京五輪では、渋谷駅にお・も・て・な・しの気持ちはないらしい。ごめんよ、クリステル。

 新潮45(8月号)で、ジャーナリストの川東吉野氏が、建築家・建築エコノミストの森山高至氏を取材している。渋谷駅についてである。

「まず地上からの出入り口が少なく、通路が狭い。にもかかわらず、妙な吹き抜けを作ってダンゴムシの殻みたいなものを覆ったり、不必要なデザイン処理をして道をより狭くしていますし、地下にいると、どこに向かって歩いているのかわからなくなります」

 プロがべた褒めしたダイナミズムは、建築家の森山氏には妙な吹き抜けとダンゴムシに映るらしい。私も、銀座線に乗ろうとしてどこを歩かされているかわからなくなり、気づけば銀座線から離れたところへと歩かされていた。

 さらに、森山氏は続ける。