以前、本コーナー(「携帯ノートPCが5万円になる日」)で、そのコンセプトを取り上げた、シンクライアント的端末が登場した。

 4月15日にNECから発表されたLuiは、パソコンの一種と言えなくもないので、今回の本コーナーのタイトルも「パソコン」とした。同社は、このLuiをホームサーバ・クライアントソリューションと位置づけており、大きく2つの製品に分けている。ひとつは、「コンテンツオンデマンド」であり、もうひとつは「PCオンデマンド」である。「コンテンツオンデマンド」は、AVサーバーに記録したビデオや写真、地デジの録画データなどを、クライアントPCで楽しむことができる仕組みだ。そして、「PCオンデマンド」は、ホームサーバーPCを、ネットワークに接続したビューワー端末で利用できる仕組みだ。今回、注目するのは、「PCオンデマンド」だ。

シンクライアント端末がPCの概念を変えるか
家に置いたサーバーを小さな端末から操作し、その様子をビュワーすると考えるとわかりやすい。

 これは、持ち出せる小型端末に簡単なOSだけがインストールされていて、パソコンとして利用する際には、LANにつながったサーバーPCの画面を表示するという仕組みだ。要するに、リモートでサーバーを操作していると考えるとわかりやすいだろう。サーバーPCとクライアント端末はネットワークでつながっていればいい。つまり、家の中ならLANで、外出先でも無線LANなどを利用すれば良いのだ。

 実際に操作してみたが、処理性能的にはまだ用途を選ぶ印象を受けた。メールチェックや文章入力など、テキストベースの作業やWebの閲覧等なら“ちょっと遅いパソコン”程度に利用できる。だが、ヘビーな動画再生ではやや動きが重く感じる。

シンクライアント端末がPCの概念を変えるか
この小さな端末の画面でWindows Vistaが操作できる。OSもCPUもネットワークの先の自宅にあるのだ。

 画質や再生のクォリティは、用途に合わせて設定できる。ただ、通信速度が遅ければ動画を見るのはつらいだろう。もちろん、この製品はまだ先駆けだ。そういう意味では、外出先の端末と家庭のパソコンを簡単に接続できる仕組みや、データ転送のために専用の圧縮ボードを開発したコンセプト自体が素晴らしい。

 興味深いのは、この製品の立ち位置だ。外出先でモバイル機器を使っている間、家にあるパソコンは使われずに寝ているのだ。それをリモートで利用すると、パソコンが1台で2役になる。ヘビーな作業は家にあるパソコンに任せてしまい、外出先では、その作業を〝見ているだけ〟でいい。ハードにかかるコストが軽減される上に、OSやソフトも1つで済むのだ。これまでは、高価で重いモバイルノートを持ち歩いていたことを考えると、ある意味で、とても画期的な考え方だ。