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岸博幸のクリエイティブ国富論

「約44兆円以内」という新たな霞ヶ関文学に見る政治主導の成れの果て

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第69回】 2009年12月18日
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 今週に入って、例年に比べて遅れ気味だった来年度予算編成が一気に動き出しました。ただ、予算編成関連の動きを見ていると、鳩山政権が掲げてきた“政治主導”の意味合いが変わったように感じられます。

四捨五入すれば
44兆4千億円までOK?

 12月15日に、来年度予算の編成に当たっての政府のスタンスを示す“予算編成の基本方針”が閣議決定されましたが、それを見ると、政権内の三党間で意思統一できないという政治の混乱とそれに振り回される官僚の側、という構図が明らかです。

 その代表は、「平成22年度の国債発行額を・・・約44兆円以内に抑えるものとする」というくだりです。“約44兆円以内”という表現は、意味不明としか言いようがありません。政治の側の混乱によって生じた“新たな霞ヶ関文学”とも言えるのではないでしょうか。

 この表現の解釈は難しいのですが、四捨五入して44兆円になる金額ならば“約44兆円”ですので、国債発行額が44兆4千億円までならOKということかと考えられます。

 財政規律の維持は、金融市場の日本に対する信認の維持の観点から不可欠です。しかし、あれだけ大騒ぎした事業仕分けでも予算を6800億円程度しか削減できず、「特別会計について聖域見直しを断行した上で税外収入を確保」と埋蔵金の活用も明示しているのに、“44兆円以内”と断言できないようでは、金融市場の全面的な信認は得られないのではないでしょうか。

 そう考えると、財務省は当然“約”という一語を入れたくなかったはずです。その方向で水面下で頑張ったのに、財政拡大を主張する国民新党の亀井大臣に押し切られたのでしょう。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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