経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2016
【第59回】 2014年10月7日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

【アレン・マイナー氏×武田隆氏対談3】
全人類の「生き残りモデル」としての日本

日本のITベンチャーの創世記を支えたキャピタリストの半生

日本のインターネットビジネス黎明期からベンチャー投資業界を牽引してきたベンチャーキャピタリストのアレン・マイナー氏。今回は、日本オラクルの立ち上げに携わり、初代代表を務めたマイナー氏が立ち上げた、日本のITベンチャーキャピタルの先駆け「株式会社サンブリッジ」と、日本におけるベンチャーの可能性について伺った。

アレン・マイナー
株式会社サンブリッジコーポレーション 代表取締役会長兼サンブリッジグループCEO。日本オラクルの初代代表に就任し、今日の日本オラクル社の急成長の礎を築きあげる。1999年に設立したサンブリッジの代表取締役として、数多くのベンチャー企業への投資に加え、株式会社セールスフォース・ドットコムをはじめとする海外クラウドベンダーの日本におけるジョイントベンチャーの設立にも携わる。2011年より新たに、初期段階からグローバルを視野に入れるベンチャー企業を支援する「グローバルベンチャーハビタット」を立ち上げる。著書に『わたし、日本に賭けてます。』(翔泳社)がある。

シリコンバレーのVCは、
リスクテイクを恐れない

武田 今回は、アレンが立ち上げた、日本のITベンチャーキャピタルの先駆け「株式会社サンブリッジ」について、伺っていきたいと思います。そもそもアレンが日本でベンチャーキャピタルを始めたのは、「自分たちでサービスをつくるより、生まれたてのビジネスアイデアに出資して、インキュベーターとしてやるほうが面白い」という考えからだったと前回伺いました。

マイナー 始めた当時は、シリコンバレーと日本のいいところを組み合わせた、日本ならではのベンチャーエコシステム(生態系)をつくることに貢献したいと思っていました。

たしかに日本にはシリコンバレーのようなダイナミズムはありません。でも、創業者の質やクリエイティビティなどは全然負けていないと思っていました。熱意やまじめに取り組む姿勢もすばらしい。

シリコンバレーは成功者が多いように見えるけれど、失敗するベンチャーの方が実は大変多いんです。大成功した会社しか日本に来ないから、すごいと思われているだけ(笑)。

武田 でも、シリコンバレーと日本では、ベンチャーの資金調達のしやすさなども大きな違いなのでは? 私は2000年に、ホットリンクの内山社長に誘われてシリコンバレーに1カ月だけ滞在したことがあります。そこで見たキャピタリストと創業者のコミュニケーションは、日本のそれとは大きく異なるものでした。

マイナー はい。違いはあります。でも、それだって創業者の能力差ではないんです。これはむしろ、シリコンバレーのベンチャーキャピタルが特殊なんです。ヨーロッパのベンチャーキャピタリストはあまりリスクテイクしないと聞いたことがありますし、ボストンやニューヨークのベンチャーキャピタリストもまた違います。その違いは、ベンチャーキャピタリストのバックグラウンドにあるのではないかと思います。

武田 なるほど。シリコンバレーのベンチャーキャピタリストの特殊性とはなんでしょうか?

マイナー 一言でいうと、自分自身の経験ですね。人は、新卒で入った業界の常識とカルチャーによって、世界の見え方が変わります。証券会社だったら、一部は債権、一部は株、とリスクを分散するのが正しい戦略です。銀行だったら、経費、キャッシュフローなどを徹底的に確認して、絶対つぶれないところにしか貸さない。

では産業界はどうかというと、自分たちの強みを見出し、ひとつの事業に集中して大きく賭けるのが正しい戦略、カルチャーなんです。

武田 シリコンバレーのベンチャーキャピタリストは産業界からの出身者が多いと?

マイナー そう。自分たちが若い頃にベンチャーを立ち上げたり、技術者や営業職として事業創出に携わったりしたことがある人が多いということ。これに尽きると思うんです。

だから、リスクテイクを恐れない。ベンチャーキャピタリストをどう教育するかではなく、それぞれの業界の違いを見極め、どの業界からベンチャーキャピタリストを呼びこむかが重要なんです。

武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


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