再編成の嵐が
吹き荒れる飲料市場

 かつて賃貸アパート経営者の節税策として、自動販売機の設置が利用されたことがあった。人通りの少ないアパートの裏手に自動販売機を設置して、「もうかるのだろうか」と不思議に思ったことがある。当時は、制度の抜け穴を見事に突いた節税策であった。

 消費税還付を狙って設置された自動販売機とは異なり、東京の駅などに設置される自動販売機は日々、技術革新のカタマリみたいなところがある。飲料を買うよりも、映し出される画面表示に、筆者は「へぇ~」と感心してしまう。オムロンの「セグメントセンサー」という機能らしい。

 オムロンによる画像情報の流用問題はともかくとして(ニュースリリース)、飲料市場はここ数年、再編の嵐が吹き荒れている。

 『会社四季報業界地図2014年版』を参照すると、業界1位のコカ・コーラボトラーは、イーストとウエストに集約されつつある。サントリー食品インターナショナルは、株式上場でいきなり業界2位に登場だ。

 アサヒグループホールディングス(以下、アサヒGHD)は、カルピスなどを買収したことにより、伊藤園を抜いて3位に躍り出た。キリンビバレッジは、4位の伊藤園に次いで業界5位に甘んじる。

 ビール市場に目を転じると、キリンビールは世界10位であり、アサヒGHD(世界12位)を上回る。ところが国内市場では、キリンビールはアサヒGHD(アサヒビール)の後塵を拝して業界2位にとどまる。

 2014年12月期では、「業界万年4位」といわれてきたサントリーホールディングス(非上場)が、酒類分野の首位に躍り出ると予想されている。飲料市場もビール市場も、キリンホールディングス(以下、キリンHD)の旗色は悪いようである。

 FIFAワールド杯ブラジル大会で、キリンHDは公式スポンサーとして大々的なテレビCMを仕掛けたにもかかわらず、日本代表が予選リーグで敗退してしまったのは誤算であったろう。これでは露出度が足りず、宣伝効果も半減である。しかも未明の試合では、ビールを片手に観戦、というわけにもいかなかった。

 そうした販売戦略の巧拙はメディアの分析に任せるとして、本連載ではキリンHDやアサヒGHDの決算データを拝借しながら、経営分析の面に焦点をあてて、特にキリンHDの経営戦略を問うてみることにする。