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9月11日 17時0分
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米国労働市場の現状と利上げ時期動向 - マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部「米経済の「今」を読む -経済指標動向-」

5日に発表された8月分の雇用統計に加え、9日には7月のJOLT求人件数が発表され、イエレンFRB議長が重視する労働関連指標の通称「イエレンのダッシュボード」が明らかとなった。各指標を振り返り、米国労働市場の実態とその先に見える利上げ時期について考察したい。

■非農業部門雇用者数はネガティブサプライズだった雇用統計
5日に発表された雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比14万2000人増と23万人増を見込んでいた市場予想を大幅に下回り、7ヶ月ぶりに労働市場の堅調な回復の目安とされる20万人増を割り込んだ(グラフ参照)。


マネックス証券では先行指標であるADP雇用統計やISM非製造業指数堅調だったことから、20万人の増加を予想していたが、大きく外れる結果となってしまった。業種別の増減数を見ると、小売業で雇用者数が前月から0.84万人の減少(7月は2.09万人の増加)となり足を引っ張った格好となった。

また、失業率については0.1%改善した6.1%と市場予想と一致した。ただ、後ほど紹介する労働参加率が低下し、失業率の低下は就職するのを諦めた人が失業者から除かれた側面があると考えられることから、マーケットはあまりポジティブに捉えなかったようだ。

雇用統計の発表日に米国株式市場は下落して取引を開始したが、取引終盤にかけて上昇して取引を終えた。筆者の調べた限り、株式市場が上昇した理由として「雇用統計の結果が冴えなかったことで、労働市場の回復が思ったほどのペースではないと考えられ利上げの早期化観測が後退した」と解説されている記事が多かった。

では、米国労働市場の回復にブレーキがかかったかというと、筆者はそうは見ていない。前述したように雇用統計以外の労働関連指標は堅調に推移しており、非農業部門雇用者数についても今年に入ってからの平均の増加数を見ると21万5000人と、堅調と言って良い数値である。(非農業部門雇用者数は元々ブレの大きい数値で、来月以降に上方修正される可能性があると見ている。)事実、雇用統計の発表後今週に入ってから米国の長期金利は利上げを織り込んでいると思われる上昇傾向を続けている。金利上昇に伴ってドルが買われ、ドル円は本日(9月11日)に1ドル107円台をつけた。

■イエレンのダッシュボード
以前のレポートでも紹介したが、「イエレンのダッシュボード」と呼ばれるイエレン議長が労働市場の回復を見極める上で重要視しているとされる9つの経済指標がある。これらの各指標について、金融危機発生前(2004-2007)の平均と比較し労働市場の回復度合いをチェックしてみたい。

(1)非農業部門雇用者数(前月差)     ○危機前の水準を回復
2014年平均   +21.5万人   2004-2007平均 +16.2万人

上述したように8月の非農業部門雇用者数は14万2000人増と単月の数値を見ると冴えない結果だったが、今年に入ってからの平均で見ると21万5000人増と、順調に回復している。非農業部門雇用者数の総雇用者数で見ても8月時点で1億3911万人と金融危機発生前に最も多かった2008年1月の1億3836万人を上回っている。

(2)失業率   ×危機前の水準を未回復
8月 6.1%   2004-2007平均 5.0%

足元の失業率は6.1%と、最悪を記録した2009年10月の10.0%からすると大きく改善したが、金融危機前の平均である5.0%には未だ届いていない。構造的な変化が起きている可能性もあり、失業率がどこまで回復余地があるかは議論が分かれているが、例えばボストン連銀のローゼングレン総裁は「完全雇用」の水準は5.25%以下であるとの認識を示している。
(3)労働参加率   ×危機前の水準を未回復
8月 62.8%   2004-2007平均 66.1%

労働参加率は一向に回復の兆しを見せず、現在も金融危機後の最低水準である。労働参加率とは15歳から64歳までの人口(生産年齢人口)うち、労働人口(15歳以上の働く意欲のある人)が占める割合を指す。現在の米国の労働参加率の低下は、何らかの理由で職探しをあきらめてしまった人が増加し、労働人口が減少していることが引き起こしている。失業率は失業者÷労働人口で計算されるので、実質的な雇用者数が増加していなくても、職探しを諦めてしまった人が労働人口から除かれれば失業率は改善する。例えば失業者10人、労働人口100人(就業者90人、失業者10人)であるとき、失業率は10÷100×100=10%である。一方、もし失業者10人のうち4人が職探しを諦めてしまえば、失業者から4人が除かれることとなる。(10―4)÷(100―4)=6÷96=6.25%と実質的には労働市場の改善が起きていないにもかかわらず失業率は減少する。労働参加率の低下の背景には人口動態の変化などの構造的要因もあるとされる。


(4)U-6失業率   ×危機前の水準を未回復
8月 12.0%   2004-2007平均 8.8%

U-6失業率とは通常の失業者に加えて、「本来は正社員としての労働を希望しているが職が見つからないためやむを得ずパートタイマーとして働いている人」や、「職探しを諦めてしまったため(2)の失業率にはカウントされていない人々」を潜在的失業者とみなして算出した失業率を示す。着実に改善基調にはあるが、未だに金融危機前の水準には達していない。


(5)長期失業者の割合   ×危機前の水準を未回復
8月 31.2%   2004-2007平均 19.1%

失業者のうち、27週(約半年)以上職に就けていない人の割合を指す。足元では7月の32.9%から8月は31.2%と大きく改善しているが、未だ金融危機前の水準までは改善していない。イエレン議長は2014年の3月に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)後の会見で、長期失業者の割合については低下させることが非常に難しく、ダッシュボードの中でも特に注目している指標の1つであるとの発言を行っている。


(6)求人率         ○危機前の水準を回復
7月 3.3%   2004-2007平均 3.0%

雇用者数と求人数の合計に占める求人数の割合のこと。求人率は3.3%と金融危機前の水準を上回っている。7月の求人数は467.3万人と金融危機前の最高である2007年3月の465.7万人を上回っている。堅調な米国経済を背景に企業の採用意欲が高まっていると考えて良いだろう。

(7)採用率           ×危機前の水準を未回復
7月 3.5%   2004-2007平均 3.8%

当該月に採用された労働者数が雇用者数全体に占める割合を示す。回復基調にあるものの、危機前の水準には達していない。

(8)自己都合の離職率   ×危機前の水準を未回復
7月 1.8%   2004-2007平均   2.1%

自主的に仕事を退職した人の割合を指す。年齢や健康上の理由から自ら仕事をやめる人もいるが、一般的には本指標が上昇するということは別の会社に転職しようとしている人の割合が増えていると思われるため、労働市場の流動性が増してきていると判断される。金融危機前の水準は回復できていないが、金融危機後に一時1.3%まで低下してから順調な回復過程にある。

(9)解雇率         ○危機前の水準を回復
7月 1.2%   2004-2007平均 1.4%

当該月に解雇された労働者数の労働者全体に占める割合。基本的に企業は経営が苦しくなるとリストラを行うため、解雇率の上昇は企業の厳しい経営状況を反映することになる。解雇率は2009年1月には1.9%まで上昇したが、改善傾向が続き現在は1.2%と危機前の平均を下回る水準まで回復している。


これまで順に見てきたように、イエレンダッシュボードの9つの指標のうち金融危機前の水準を回復しているものが3つ、未回復のものが6つという状況である。ただ、未回復の指標についてもいずれも長期的な改善傾向は維持しており、米国労働市場の回復を示していると言える。このままの傾向が続けば、来年半ばまでには更に多くの指標が金融危機前の水準を回復すると見込まれ、回復がさらに加速する可能性も考えられることから、FRBが来年の利上げを検討している根拠の1つとなっている。

■マーケットの意識する利上げ時期
雇用統計の非農業部門雇用者数が悪い数値であったために、利上げの早期化観測が後退したとの解説があったが、これまで見てきたように労働市場の回復傾向は顕著である。マーケットでは経済指標が予想より上振れたり下振れたりするたびに、「利上げ早期化観測」が台頭したり後退するといった解説が行われるが実際に市場が想定している利上げ時期に変化は起きているのだろうか。

グラフは縦軸にフェデラルファンド(FF)金利先物の利回りを、横軸に年月をとったものであるが、利回りが0.5%に達するライン、つまりマーケットが現在のFF金利0.25%から0.5%に利上げが行われると考えている時期は2015年の8月となっている。たしかに3ヶ月前と比べて1ヶ月ほど早くなっているが、実は大きな変化はないことが確認できる。


直近で注目されるのは来週16日と17日に行われるFOMC(連邦公開市場委員会)である。金融政策に対する現在のメッセージである「量的緩和終了後も相当な期間ゼロ金利を維持する」という文言が修正または削除される可能性が指摘されており、もし実現した場合には利上げの早期化観測が広がる可能性がある。また、直近進んでいる金利上昇とドル買いは上述のFOMCの結果を織り込んでいる可能性があり、もしメッセージに変化がなかった場合には一時的なドル売り(円買い)への巻き戻しが起こる可能性も想定しておいたほうが良いだろう。

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