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1000円台で楽しむ おとなの居酒屋

ずっと変わらない大切な空間で、いつも変わらぬ酒と肴を楽しむ 武蔵屋(野毛)

浜田信郎
【第50回】 2009年11月6日
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 連載50回の節目となる今回は、東京を飛び出して、横浜・野毛の「武蔵屋」にやって来ました。

 大正8(1919)年に酒屋として創業した「武蔵屋」が酒場に転向したのは、終戦直後の昭和21年頃のこと。創業からは90年、酒場としても63年の歴史を持つ老舗です。

 店を守っているのは、創業者の娘さん姉妹。お二人とも80代と、ご高齢なこともあって、現在は体調と相談しながら、気候のいい時季に、週に3日程度、休み休みの営業中です。

 店にはメニューはなく、基本的には日本酒3杯に、いつも変わらぬ5品の肴が出されます。お酒が3杯までしか飲めないことはつとに有名で、「三杯屋」とも呼ばれています。

 日本酒も、昔から変わることなく「桜正宗」、1銘柄のみ。この「桜正宗」の燗酒を、土瓶からツツゥ~ッと注いでくれるのも、この店ならでは。受け皿のないグラスに、ぷっくりと表面張力になったところで、ピタリと注ぎ終える技はさすがです。

 1杯めのお酒とともに出される肴は玉ネギの酢漬けに、おから、そしてタラ豆腐の3品。2杯めには4品めとして納豆が出され、3杯めに5品めのお新香が出されて終了となります。

 この5品では肴が足りない人のために、追加でコハダ酢や、ニシン煮、きぬかつぎなど、何品かの日替りのつまみ(各400円)も用意されています。また、3杯のお酒を飲み終える前であれば、ビール(大瓶か小瓶)も飲むことができます。

 この店の最大の魅力は「変わらない」という点にあります。私がこの店に通い始めてからの10年間も変わっていないし、となりの席の40年来の常連さんも「昔からちっとも変わってないんだよ」と話してくれます。

 この不変な空間にどっぷりと身を浸して、ゆっくりと燗酒をいただいていると、日々の小さな出来事なんて、どうでもよく思えてきます。

 この「変わらない」空間を守るために、実はものすごい努力が必要であることを知ったのは、つい最近のこと。

 たとえば、席に座ると出される輪島塗りの塗箸は、傷ひとつないように、こまめに新品の箸に取り替えられいるし、店内の椅子も、前の椅子と外観や座り心地が変わらないように新替えされています。

 この努力があってはじめて、何年ぶりかにやってきたお客であっても、「変わらないなあ」と喜んでくれるお店になるんですね。

 3杯5品のセットは2200円ながら、2杯までで飲み終えると1700円、1杯までだと1100円ですので、1000円台で楽しめる居酒屋として、ここにご紹介させていただいたような次第です。

お店 肴 「桜正宗」
創業当時から看板も暖簾もない、隠れ家のようなお店 いつ行っても、酒の肴はこの5品! 桜正宗の燗酒は、この土瓶からツツゥ~ッと注がれる

【お店情報】
店名: 酒亭「武蔵屋」
電話: 045-231-0646
住所: 横浜市中区野毛町3-133
営業: 17:00-21:00(20:30 LO)、休み休みしながら、火水金に営業中

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浜田信郎

1959年、愛媛県生まれ。造船会社で働く設計士。サラリーマンの傍ら、名店酒場を飲み歩く。その成果を綴ったブログ「居酒屋礼賛」は、呑んべいに大人気。著書に『酒場百選』(ちくま文庫)がある。


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