経営 X 人事

依然増え続ける心の健康問題
実効性の高い対策とは

 メンタルヘルスケアへの企業内での対策は、2000年のメンタルヘルス指針が提示されてから進展しています*1。なかでも従業員や管理監督者への教育研修、職場復帰支援、相談対応体制整備は実施率が高くなっています。
*1:厚生労働省 .平成19年度労働者健康状況調査, 2008 .

 しかし一方、職場における心の健康問題はなお増加傾向にあり、企業の経営活動にも影響を与えるほどになっています。この課題に対処するためには、上記の基本的な対策を進めていくとともに、その方法と考え方を根本的なところから見直す必要があるのではないでしょうか。

 たとえば、相談対応体制を整備し、発症のリスクの高い方へ早期にカウンセリングなどを実施することは大切ですが、それのみで不調者の減少を期待することはできません。確かに不安感や疲労感などのストレス反応が高くなればなるほど、メンタルヘルス不調になりやすいわけですが、全体では中程度のストレス反応の人数が多いため、実際に発症するのも、ストレス反応が中程度から少し高いくらいの人からが最も多いのです(図表1)。そのため、不調者の発生を抑制するためには、組織全体を健康な状態に保つアプローチが必要になります。

 また、教育研修を開催して必要事項を伝えても、その後受講者の普段の行動が変容しなければ、組織の健康度や生産性には効果を持ちません。しかし、研究が進み、科学的根拠がある、と立証された教育方法を実施することが可能になっています。

 そこで、本連載では、効果のある対策を実施していくための方法を紹介していきます。第一歩としてまず次項からは、考え方の整理のために、これまでのメンタルヘルスの課題と新しい潮流を説明しましょう。 

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TOMH研究会

「東京大学Occupational Mental Health」研究会。2009年に発足。臨床心理士や産業医、産業保健の研究者など、研究と実践領域の専門家が集まる。鍵となるテーマを検討・追究し、研究と実践の橋渡しを通じて、働く人全てのメンタルヘルス向上と、専門職のレベルアップに役立つノウハウの蓄積を行う。


ここから始める! ポジティブメンタルヘルス

依然として悩ましい職場のメンタルヘルス問題。" 未然防止"が重要になる今、人事部門がどう考え方を見直し、動けばいいかを、すぐ使える具体的なツールも含めて紹介する連載です。第1回目は、これまでのメンタルヘルスの課題と新しい潮流、そして連載の構成について紹介します。

「ここから始める! ポジティブメンタルヘルス」

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