権利義務に関わることは、あいまいな書き方をしない

 法律では、国民の権利義務に関わる規定については神経の使い方は並大抵ではありません。たとえば、次の条文は運転免許の携帯義務の根拠規定です。「誰が、どんな場合に、何をしなければならないのか」が注意深く書かれているのがわかります。

 ひとつだけ気になるのが「自動車等」の「等」ですが、もちろん、義務付け規定ですので、ちゃんと定義がされています。道路交通法84条では「自動車と原動機付自転車」を「自動車等」と略称していることが説明されています。これで義務の内容はすべて明らかになります。

○道路交通法
(免許証の携帯及び提示義務)
第95条 免許を受けた者は、自動車等を運転するときは、当該自動車等に係る免許証を携帯していなければならない
2 略

「主語を述語に近づける」工夫とは?

 法律の条文では、ひとつの事柄は「。(句点)」をはさまず書いてしまおうとする傾向があります。一旦、文章を切ると、前の文章と後の文章とのつながりをめぐって、いろいろな読み方が生じてしまいます。そこで、「一筆書き」のような書き方をするのです。

 この「一筆書き」は、条文が「読みにくい」と感じる原因にもなりますが、これも、すべての読み手に同じ意味に受け取ってもらうための工夫といえます。

 ただ、問題も生じます。一筆書きでは、「誰が(主語)、どんな場合に、何をしなければならないのか(述語)」の主語と述語の間に、とてつもなく長い文章が入ってしまうことがあります。せっかく主語を明らかにしても、これでは条文の意味が理解しにくくなってしまいます。そこで、こんなときには「主語を述語に近づける」工夫をします。

 実際の条文を見てもらった方が早そうです。上に示した道路交通法95条でいえば、もし、「自動車等を運転するときは」の部分がもっと長いなら、この部分を前にもってきて主語をわかりやすくすることでしょう。