8月末から、ロシア・サハリン州(8月30日―9月3日)、モンゴル・ウランバートル(9月5日)、香港(9月14日―20日)と、連続で出張した。恒例の学生引率がメインの仕事だが(第19回などを参照のこと)、エネルギー産業を主要産業とするロシア、モンゴルを調査し、民主化問題を抱える香港から、18日のスコットランド独立の住民投票を観たことは有意義であった。今回は、ロシア・サハリン州の現状報告から入り、スコットランド独立について論じたい。

サハリン州の石油・天然ガス開発プロジェクトと
経済の劇的な変化

 ロシア・サハリン州への訪問は、今年3回目である。今回は、5月にサハリン国立総合大学と立命館大学の間で包括連携協定が締結されたことに基づき(第84回を参照のこと)、サハリン州の調査を開始するための訪問であった。

 サハリン州といえば、ご存じの通り石油・天然ガス開発である。サハリン石油ガスプロジェクトは1990年代後半から始まっている。サハリン州内および大陸棚の石油・ガス埋蔵量は石油換算で450億バレルと評価されており、北海の大陸棚の未開発鉱量に匹敵する。サハリン1から9までのプロジェクトが計画されており、現在稼働しているのは、日本も参加する多国籍企業体によって運営されるサハリンI、サハリンIIである。

「サハリンI」「サハリンII」を簡単にまとめておく(サハリン大陸棚石油・天然ガス開発プロジェクト位置図[PDF]を参照のこと)。「サハリンI」は、オペレーターがエクソン・モービル(出資率30%)、プロジェクトパートナーにはロフネスチ・アストラ(同8.5%)、サハリン・モルネフチガス・シェリフ(同11.5%)、日本の企業連合ソデコ(同30%、JOGMEC・伊藤忠・丸紅等出資)、インド国営石油公社ONGCヴェデシュ社(20%)。鉱区は、チャイド、オドプト、アルクトゥン・ダギで、生産開始から、石油5400万トン、ガス52億立米が採掘されている(2012年現在)。

「サハリンII」は、オペレーターは、サハリンエナジー投資会社。出資者と出資割合は、ガスプロムが50%と1株、シェル27.5%、三井物産12.5%、三菱商事10%。鉱区はピルトゥン・アストフ、ルニで、石油・コンデンセート3700万トン、LNG600億立米が生産出荷されている。