「PLは現金の動きをあらわす表ではなく、その期の正しい利益を計算するための表なんだ」

「その期の正しい利益?」

「そうだ。正しい利益だ。例えば、今期に高橋君が機械を販売して客先に納入したとする。しかし、その代金は翌期になって支払われることになっていたとする。その期の正しい利益、つまりその期の正しい営業活動を表そうとすると、その機械の売上高は今期中に計上したほうがいいか、それとも代金が支払われる来期に計上したほうがいいか、どちらがいいと思う?」

「そりゃ、今期に売上は計上しておくべきだと思います。今期に営業活動して今期にすでに機械を客先に納入したわけですから」

「そうだよな。今期の正しい利益を計算するためには今期中に売上計上しておくべきだ。しかし、その売上に関する現金の動きは今期中には一切ないよな。CSには何も表れないということだ」

「そうか、だからPLの利益とCSの現金の残高は一致しないんだ」

「その通りだ。繰り返すが、PLは現金の動きをあらわす表じゃなく、その期の正しい利益を計算するための表なんだ」
 

財務3表に具体的な数字を入れてみる

 石田の説明はわかりやすかった。高橋が自習用に購入して読みかけては挫折した会計の入門書とは説明の仕方が全く異なっていた。高橋がそんなことに感心している間にも石田の説明は続いた。

「この表に数字を入れたら一気に会計の理解が進む。じゃあ、高橋君が資本金10万円で自分の会社を設立したとしよう」

「そんな少額の資本金で会社を設立できるんですか?」

「資本金1円でも会社は設立できる。ただ、現実的にはもっとたくさんの資本金が必要だろうけど、今日は会計の仕組みを理解するためだから金額は関係ない。資本金を10万円で会社を設立したらPLはどう動く?」

「売上高に10万円計上されるんですか?」

「僕たちは子どもの頃からお金に関する表は収支計算書しか見たことないから、現金が動くとどこかの数字が動くと思ってる。また、多くの人がPLを収支計算書のように考えているから、資本金10万円で会社を設立すると、PLのどこかが10万円増えると思ってる」

「おっしゃる通りです」

 高橋が素直に感想を言った。