経営のためのIT
【第26回】 2014年9月26日
著者・コラム紹介 バックナンバー
内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]

経営者のITマインドは、11年間進化していない!
――調査で見えた、経営とITを分かつ「深い谷」

previous page
3

 さらに、「過去1年間の社長訓示などのなかで、『IT』『インターネット』など情報化に関する言葉が何回登場しましたか」という質問では、5回以上と回答した企業は、2001年の53.4%から2012年には32.8%と20ポイント以上も後退しているという結果となった。

 2000年前後のドットコムバブルや森内閣のe-Japan戦略などの影響によりITへの過度の期待があったことを差し引いたとしても、11年ものあいだ企業ITに対する経営者の理解やコミットメントが停滞している実態は否めない。

未来につなげるには

 2014年度にユーザー企業が最重要視するIT戦略テーマでは、売上増大への直接的な貢献が、業務コストの削減やITコストの削減を抑えてトップに浮上しており、ITを活用したビジネス変革への期待の大きさを物語っている。

 しかし、前述のようにITに対するユーザーおよび経営者の理解やコミットメントが停滞している状況では、こうした期待に応えられるはずがない。

 毎年行っているこの調査では、主要なIT動向に対する実施率を経年的に追っている。「IT基盤の統合・再構築」「仮想化技術の導入」「データセンターの移転・統合」といったIT部門が中心となって独自に進めることができる施策については着々と実施率が高まっている。

 しかし、「ビジネスプロセスの可視化・最適化」「情報・ナレッジの共有・再利用環境の整備」「全社的なコンテンツ管理インフラの整備」「マスタデータの統合」といった、ユーザー部門を巻き込んだ取り組みが求められる施策については、遅々として進まないという実態が明らかとなっている。

 今後、企業は、クラウド、モバイル、ソーシャルといった技術の巨大なうねりに飲み込まれることなくこれらを活用し、ビジネスのグローバル化への対応、ワークスタイルの変革、新規顧客価値の創出といった“攻めの
IT戦略”を推し進めていかなければならない。

 特に、タブレット端末やSNSのようにコンシューマーIT分野から発展し、企業ITに浸透してきた新規技術は、コストの面でも導入や運用の難易度の面でも、以前よりも格段にハードルが低い。経営者やユーザーがITに対する理解を深め、これらの潜在的な可能性を上手く活用できれば、さまざまなビジネス機会を切り開くことができる。

 この十数年間、企業は「守りのIT」を固めることに大きな労力を費やしてきたといえる。しかし、こうした地道な活動やその成果は、経営者やユーザーから十分な理解を得るに至っていない。

 本稿前回の「深い谷の向こう側にいる経営者――ITの潜在的可能性をいかにわかりやすく説くか」でも述べたように、この間、企業が失った最も大きなものは「経営者やユーザーとITとの距離」ではないだろうか。

 ITを活用した新規の顧客価値の創出やビジネス変革は、経営者のコミットメントとユーザー部門の協調なくして実現することはできない。企業は、この十数年で失ったものと積み残した課題を再度見つめ直し、攻めに転じるIT活用を推進していかなければならない。

previous page
3

経営戦略 一覧ページへ

媒体最新記事一覧

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は大手ユーザー企業のIT戦略立案・実行のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。


経営のためのIT

日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

「経営のためのIT」

⇒バックナンバー一覧