株式レポート
9月24日 18時0分
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グローバル企業の見方 - 広木隆「ストラテジーレポート」

半月ぶりにレポート更新

今をときめくあの方も、かつてアシスタントとして出演していたテレビ東京の人気番組『出没!アド街ック天国』は、このセリフで始まる。

「おまっとさんでした。地域密着系都市型エンタテインメント、出没!アド街ック天国! 私が、あなたの街の宣伝本部長、愛川欽也です」

まさに、「おまっとさんでした」という感じだろうか。前回のレポートが9月9日付けだから、実に半月ぶりのレポート更新である。この間、僕の周りであっと驚くようなことが起きて、ショックのあまり筆を持つ気にならなかった…というようなことではまったくない(その辺りの顛末はこちら⇒9/17新潮流『乾杯!』)。

どうしてこんなに間隔が空いてしまったのかというと、書くことがなかったからである。ドル円相場が109円をつけ、日経平均が1万6300円台と6年10か月ぶりの高値に上昇して、それでも「書くことがない」とは何事だ!とお怒りのかたもおられよう。

しかし、ここまでの相場展開はすべて僕の想定通り、既にレポートで述べている。だから改めて書くこともないのである。同業者のなかには、同じことを延々と繰り返しているばかりのひともいる。「同じ人間が同じ考えで書いているのだから、内容が重ならないほうが無理だ」という意見もあるが、僕の場合、前に述べたことを再び書くのは趣味じゃないのである。

これまで書いてきたレポートをいま一度ご確認願いたい。

1カ月前の8月25日付けレポート「この先の相場は米国次第」では、こう述べている。 <では、その米国はどうなるか。まず米国株は S&P500 が 2000 ポイントの大台目前。ここまで来たら、大台に乗せなければ市場は気が済まないだろう。そして S&P500 が 2000 ポイントの大台を達成したら、景色がまた違ってくるだろう。米国の利上げ時期が取沙汰されるなかで、株価が大台を塗り替える。それは、相当、相場が強い証と捉えられ、リスク選好ムードが強まるだろう。そのムードのなか、日本株も堅調持続というのがメインシナリオだ。>

9月1日付け「日本株 9月相場の展望」と題するレポートでは、日経平均は1万6000円を目指す展開となるだろう、8月末の値から500円程度の上昇となる、と述べている。

「この先の相場は米国次第」のレポートでは、為替相場の円安にも言及している。これまで、例年見られてきた傾向がすべて逆のパターンになっていることから、今年は「夏の円高」ではなく「円安の夏」であろうと予想した。それに加えてこう述べている。

<もちろん、アノマリーの逆効きだけを理由に円安を予想したわけではない。雇用統計をはじめとする米国の経済指標は米国経済の順調な改善を示しており、FRB の政策が金融緩和の出口に向かうことは明白であるからだ>。

実際に、16-17日にかけて開催されたFOMCではFRBが考える出口戦略の道筋が示された。イエレン議長は、「相当な期間、ゼロ金利を保つ」、「利上げは経済次第」といったこれまでの文言を繰り返し、市場に先入観やいたずらな動揺を与えることなく、FOMCメンバーの金利予測を淡々と示すことで、金融正常化のメッセージを上手に市場に伝えた。それを受けて米国株式市場ではNYダウ、S&P500ともに史上最高値を更新した。

これがすべて、と言ってもいい。米国経済が好調。米国の金融政策は正常化に向かう。これが世界の金融市場を読み解く、一番、基礎となるテーマである。「アンカー」である。ここから離れない限り、大きく間違うことはないだろう。
円安と輸出株

この間、大きく状況が変わったのは円安のスピードが加速したことと、それを受けた市場の反応であろう。それまでは円安にもかかわらず電機・自動車などの輸出関連株の動きは鈍かった。上記「この先の相場は米国次第」のレポート、<低調な輸出株>という部分の記述は以下の通り。

<ドル円が 102 円台半ばの膠着を放れはじめたのは先週のことだが、先週 1 週間の業種別パフォーマンスを見ると、値上がり率上位には証券、不動産、倉庫、食品、情報通信など円安メリットとは関係ない業種が散見される。一方、自動車や電機の上昇率は0.8%、精密が1%弱でともに TOPIXの1.2%を下回る。代表的な輸出株でパフォーマンスが良かったのは 2.5%上がった機械くらいである。その背景は何か。それは僕が先週のレポート、「日本のマクロ経済と企業業績の今」で、日本の代表的な輸出産業だった電機・自動車は海外生産体制が進んだ結果、日本からの輸出が激減、「外需セクター」ではあってももはや「輸出セクター」ではない、と指摘したからである。そして旺盛な海外の設備投資需要を受けて輸出が伸びているのは機械くらいである、と述べた。
(中略)これはもしかしたら、株式市場はこれ以上の円安を好感しない可能性を示唆しているのかもしれない。為替が経済や企業業績に与える効果というのはプラス・マイナス両面ある。円高にはデメリットもあるがメリットもある。それとまったく同じで円安にはメリットもあるがデメリットもあるのだ。そして何よりも、前述の通り、メーカーの多くは生産拠点の海外移転を進めているため、円安が進めば進むほど海外での価格競争力が高くなる状況にはもはやない。円安はデメリットこそあれ、もうメリットはそれほどないのかもしれない。>

実際、経済界からもこれ以上の円安を望まないといった声がちらほら聞かれ始めた。実質実効為替レートの観点からは、円相場は「未曽有の円安水準」といったレポートも発行された。

ところが、さすがにこれだけの円安になると市場も「当然の反応」を示す。22日終値までの過去1カ月の業種別パフォーマンスをみると、上位には輸送用機器、電機、機械、精密といった輸出関連株が並び、下位には不動産、陸運など内需関連株が並んでいる。(グラフ1) 非常にわかりやすい教科書通りの展開だ。トヨタが長く抜けなかった6000円台前半の「壁」を超えて6500円台をつけたことや円安効果の大きいキヤノンが連日の高値追いとなったことは象徴的である。



メディアもさっそく円安歓迎に論調を変えた。23日付日経新聞コラム「スクランブル」は、「円安、にわかに楽観論」の見出しを掲げ、<輸出が思うように伸びず、円安には従来ほどの株価押し上げ効果はなくなったとの指摘がある。だが、先週後半一気に進んだ円安・株高からは、投資家の間でにわかに高まる企業業績拡大期待も透けて見える。株式市場を見る限り、「やっぱり円安は効く」――そんな声が強まってきた>と述べている。

円安⇒海外収益の円換算上振れ⇒外需株高という図式は成り立つがそれだけではないだろう。業績押し上げ要因としての円安を好感しているというよりも、ビジネスを展開している場所である米国経済の好調さを株式市場は好感しているのではないか。「円安歓迎」というよりは米国の金融正常化⇒ドル高、の背景にある米景気の復調を市場は評価していると考える。

例えば自動車で言えば北米の比重が大きい富士重の株価上昇が完成車メーカーのなかでも群を抜いている。塩ビ事業の中核を担う米子会社シンテック社の業績好調を受けて信越化学の株価は年初来高値をつけた。味の素は、米冷凍食品メーカー、ウィンザー・クオリティ・ホールディングスの買収を発表した。前回のレポートで、味の素は新興市場開拓のパイオニア、というような紹介をしたが、米社の販路を活用していよいよ巨大な米冷食市場攻略に打って出る。株価は23年ぶりの高値をつけた。

米国企業の買収では一昨年、米空調機器大手グッドマン・グローバルを買収したダイキン工業の例がある。ダイキンは中国や欧州では基盤を築いてきたが、米国は手薄だった。米国で高いシェアを持つグッドマンを傘下に持つことで、ダイキンは、名実ともに空調世界最大手の地位を固めた。欧州の不透明感などもあって足元の株価は冴えないが、4-6月期の業績は過去最高、株価もほぼ最高値圏にある。
グローバル・プレーヤー

今回は、あえて米国経済の好調を取り込む企業にフォーカスしたが、グローバルに稼げるところで稼ぐ企業が市場で評価されるというメッセージは、前回のレポートと変わらない。グラフ2は所在地別売上高を開示している企業のうち、継続してデータが取得できる約200社の地域別売上高の構成比の推移を示したものである。いまや売上高の半分は海外である。



売上高の半分は海外 - この事実を「実感」できるひとは少ない。なぜなら、われわれが日々暮らしているのは、極めて「ローカル」な世界だからである。ヒトは地元で生活するが、企業は楽々と国境を飛び越える。グローバルで活躍する企業の実態は、日本国内で生活するわれわれには見えにくいということだ。

だから、消費税増税の影響もあって国内消費が落ち込み、4-6月のGDPが大幅減速、夏場の天候不順もあって景気の停滞感がぬぐえない日本にいると、企業業績も不振というイメージをもってしまう。しかし、上場企業は - 少なくともそのなかのグローバル・プレーヤーは -日本で暮らしているわれわれとは、まったく違うフィールドで活動している。いわば欧州のクラブでプレーする日本人サッカー選手や日本人メジャー・リーガーの感覚である。日本の閉塞感が強いからと言って、そうしたグローバルで稼ぐ企業の業績まで冴えないと思ってしまうのは認識が正しくない。国内の停滞感と切り離してグローバル企業を評価することが大切である。

前回のレポートで述べた通り、第2四半期の北米の営業利益は4割増益。アジアは13%増益で4000億円を超え、日本で稼ぐ利益の半分に当たる(グラフ3)。



1カ月後の4-9月期決算発表では、グローバル企業の好業績が確認できることだろう。

しかし、前に述べたことを再び書くのは趣味じゃないといいながら、このレポートの半分くらいが以前書いたレポートからの引用である。それでもいいのである。同じことを繰り返しているようで、少しずつ新しい内容が加わっている。テレビ東京の『出没!アド街ック天国』は人気番組ゆえ長寿番組で、かれこれ20年近く放送されている。これだけ長く番組が続くと、当然、街にも限りがあるため、前に取り上げた街を再び特集することになる。実際、浅草、鎌倉、銀座などは過去に何度も取り上げられている。そして、そのたびに新たなスポットが紹介されるのだ。街は変わりゆくものだからである。経済も市場も同じである。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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