経営者が本を書くのは
ある意味で復讐

編集部 そういえば、杉本さんが起業を決意して株式上場を目指したのは、藤田さんが書いた『ジャパニーズ・ドリーム』がきっかけだったということですが。

杉本 はい、そうですね。表紙を開くと、角刈りでスーツを着た初々しい藤田さんの写真が出てたのが強烈に印象に残っています(笑)。

編集部 会社には浮き沈みがある中で、経営者が本を書くことについて、藤田さんはどのように感じていらっしゃいますか?

藤田 正直に言うと、僕が本気で書いたのは『渋谷ではたらく社長の告白』と『起業家』の二冊です。これは、ある意味で復讐ですね。会社を経営していると、特に上場企業ともなると、やはりぼろくそに言われることが少なくない。アメーバを大きなメディアにすると宣言したり、必ず黒字化すると説明しても、もっともらしい理由を並べ立てて批判される。ところが、実現したら手のひらを返したように賞賛され、みんなバカにしていたことなど忘れてしまう。本を書くのは、起業家としてバカにされた世間への復讐でもあります。

杉本 本でなくては伝わらない部分もありますしね。

藤田 そう。当時一緒に働いていたはずの社員から「この本を読んで初めて社長の苦悩を知りました」と言われることがある。一冊の本で出来事を体系的にまとめることには意義がある。

杉本 実際、この本が出るまでは、私がほかの会社に金を流して早々に復活したというような噂がまことしやかに流れたりしていました。でも、この本が出版されて「君が投資家に何を伝えたかったのかわかったよ」とわざわざ連絡をいただいたりもして。本当に、本を出してよかったと思ってます。

藤田 そういえば、アマゾンのこの本のページにも、多くのレビューが書かれているね。

杉本 ありがたいですね。ただ、やはり両極端の意見が多いというか。起業家マインドをもってる方には刺さるようですが、ただの交遊録にしか思えないという人もいます。

藤田 両極端の意見が出るほど、いい本だと言われたことがあるよ。

杉本 そうなんですか。またちょっとモチベーションが上がりました(笑)。

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