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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

“おもてなしの国”のはずなのに
世界で勝てるシステムは、なぜ出てこないのか?

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第3回】 2014年9月29日
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 もう少し例を挙げてみましょう。

 米フェイスブックは、ゴーグル型の映像端末を開発する米ベンチャー、オキュラスVRを買収しました。ゴーグル型映像端末は先日開催された東京ゲームショーでも大人気でしたが、同社では目の網膜に直接映像を投影する実験も行っているそうです。その映像は本人にしか見えませんから、面白いと思いませんか。ゲームだけでなく、セキュリティのアプリケーションなどさまざまな分野に応用することが考えられます。

 また、米ベンチャー、EMOTIVがつくっている脳の信号を計る「EPOC+」というウェアラブル機器があります。これを頭に装着すると、今集中しているかどうか、ストレスのレベルはどれくらいか、今見ている人やモノが好きか嫌いかといったことがわかります。10年前は300万円もするものでしたが、現在は3万円で買えます。さらに5年後には3000円程度になり、他の製品の付属機能になっていることでしょう。

 こうしたユニークで革新的な技術をどのようにシステム化し、いかに儲かるしくみにするか、それを考えるのが「システムシンキング」です。たとえば前述した「EPOC+」と、自分のジェスチャー・音声認識によって操作できるマイクロソフトの「キネクト」とを組み合わせて、高齢者用の健康促進ツールにするというのもアリかもしれませんね。

「義理の母」に質問攻めにあうような
システムではNG

 システムを作るにあたって、忘れてはいけないことは「シンプル・イズ・ベスト」。誰でもすぐに使いこなせるようにつくることが大事です。ただ、あのスティーブ・ジョブズが言ったとおり、「シンプルにつくるのが一番難しい」のです。

 マイクロソフトのビル・ゲイツは、シンプルにつくることの重要性を社員に示すために「義理の母テスト」を行っています。ところで、マイクロソフトの社員にとって一番辛いことは何だと思いますか?

 それは、親戚の人たちから電話が掛かってきて、自社製品の使い方を聞かれること。そういう電話があるのは使い方がわかりにくい証しですから、社員にとっては自社製品の欠点を指摘されるようなものです。なかでも、一番気を遣うのは「義理の母」、つまり妻や夫の母ですね。

 もちろん、「義理の母テスト」はジョークなんですけど、要するにビル・ゲイツは「面倒な電話がかかってこないように、わかりやすく使いやすいシステムを構築しなさい」ということを言いたいわけです。

 こうしたユーザビリティがなぜ、米国では徹底され、日本では行き届いていないのか。本来、日本人のほうがきめ細かな気配りができるはず…と首を傾げる人もいるかもしれませんね。

 たしかに日常生活において、日本人は気遣いにあふれています。「灰皿を持ってきて」と頼まれると、ライターも一緒に持っていきます。こういう気遣いは、日本人はとてもよくできているんですね。

 東京オリンピック招致でも話題になったように、「おもてなしの心」は日本人のもつ美徳の1つ。でも、残念なことに、その「おもてなしの心」がIT製品には反映されていません。

 それは、日本ではIT製品の開発に際して多様な意見を取り入れていないからにほかなりません。技術者がオタク思考で開発したまま製品化されているため、普通の人には“使いにくいシロモノ”になってしまっているのです。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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