ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

“おもてなしの国”のはずなのに
世界で勝てるシステムは、なぜ出てこないのか?

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第3回】 2014年9月29日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
3
nextpage

日本でユーザビリティが
進化しないのはなぜか

 製品づくりに関する、日本と米国の違いを象徴するエピソードがあります。

 以前、私がある日本のメーカーと共同で「USBカメラ」を開発したときのことです。カメラが作動している間にUSBコネクタを抜くと、PCがフリーズすることがわかりました。

 我々が開発を担当したソフトの改良では改善できないため、ハードでの対応をお願いしたのですが聞き入れてくれない。私の大反対も押し切って、メーカーは強引に発売に踏み切りました。「作動中にUSBコネクタを抜くようなバカな消費者はいない」と言うのです。確かに、日本ではそれは正解でした。

 でも、米国人は違います。自分勝手に平気で抜くんですね。米国では抜く人がたくさんいてクレームが殺到し、結局、商品はリコールになりました。

 米国では、電子レンジの取説に「猫を入れるな!」という注意書きがあります。これはアメリカンジョークではありませんよ。シャンプーした猫を乾かすために本当に入れる人がいるんです。

 日本では、真面目で従順な消費者に甘え、しかも狭い視野で開発を進めているため、いつまで経ってもユーザビリティは進化しません。こうした未熟なシステム製品が次々出てくるのは、今の日本企業が抱える製品開発の大きな問題点といえるでしょう。これではグローバルな競争を勝ち抜けません。

 開発チームにさまざまな考えの人がいて「こんなの使いづらいよ」という意見が出れば、簡単に直せることも多いはず。多様性がない開発体制ではシステムシンキングも望めないでしょう。

多様な人に発言権を与えて
知恵を集めることが絶対必要

 では、どうすればいいのか。解決策は、多様な人の頭脳を集結させること。技術者だけでなく、顧客窓口、クレーム応対などもチームに入らなければ、イノベイティブなシステムシンキングは生まれません。いろいろな経験を持つ人の知恵や意見を集められるチームでなければ失敗することは明らかです。

 私は経営者たちが集う場によく参加しますが、そこでこんな質問を投げかけています。

 「アップルが躍進するきっかけとなったiTuneとiPodのパーツは、ソニーには全部そろっていました。やろうと思えば、すぐに製品化できたはずですが、できませんでした。どうしてだと思いますか?」

 それは、前述したような多様な人の頭脳を集結させた開発チームがなかったからです。そうした開発チームがなければ、パーツだけあってもiTuneやiPodのようなシステムは生まれないというわけです。おそらく、多くの日本企業がソニーと同じような課題を抱えているのではないでしょうか。

previous page
3
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

⇒バックナンバー一覧