テレビへのこだわりを早々と絶ち切り社会インフラビジネスへと大きく舵を切った日立、東芝、三菱電機が好決算を連発する一方で、「家電」中心だったパナソニック、ソニー、シャープの3社は存亡の危機に瀕していた。ところが2014年度の半ばを過ぎたいま、3社の命運が大きく分かれた。

 今年の3月決算で黒字転換を果たしたシャープの経営危機は一段落し、1200億円の黒字を確保したパナソニックは構造改革にメドがつき、復配も実現、収益拡大モードに突入してきたかに見える。苦しいのはソニーだ。過去7年のうち6期の決算で赤字となっているうえに、今年度500億円の赤字としていたが、一転、2300億円の赤字に下方修正。上場以来初となる無配も決まった。

パナソニックとソニー
両者の明暗を分けた“最大の要因”

 パナソニックとソニーはいろいろな意味で好対照をなしている。

 社長交代は両社とも2012年で、ともに50代の若い社長が再建のミッションを負った。

 パナソニック社長の津賀一宏は、エンジニア出身で研究開発にも従事してきた。

 一方、ソニーの平井一夫は、文系かつエンタテインメント育ち。

 社長就任から半年余りの2012年1月、2人の新社長はラスベガスで開かれた世界最大の家電の見本市CES(International Consumer Electronics Show)の舞台に登場した。英語の堪能な平井一夫は見るからにプレゼン上手。4Kテレビをはじめとするソニーのテレビのクオリティの高さを颯爽とアピールした。

 他方、パナソニックの津賀一宏は緊張した面持ちながら、世界最大の家電ショーの舞台でなんとB to Bシフト宣言をした。TPOを考えれば、自社の構造改革の方向性を語るのは場違いであったばかりか、家電というコンシューマービジネスこそ創業以来の金看板を、ラスベガスで捨て去ると宣言したのだから、社員の仰天ぶりは想像に難くない。