「オープン・ポジション」で警戒心を取り除く

 講演会やセミナーで話をしていると、椅子に深く腰掛けて腕組みをしながら聞いている参加者が多いときはとても話しにくく、メモをとったり体を前に乗り出して聞いたりしてくれている参加者が多いときは、興が乗って講演時間をオーバーすることもしばしばです。

 一方、腕組みは「拒絶」「警戒」のサイン。自分と相手との間に腕という障害物を置くことで、心理的距離をとって自分を守っています。腕組みをする、握りこぶしを作る、足を組む、口を閉じるといったしぐさは「クローズド・ポジション」といわれ、警戒や緊張、拒絶、不同意などを意味します。

 腕組みをしている人に、「なんで腕組みをしているんですか?」と聞いても、答えは返ってきません。意識して組んでいるわけではなく、潜在意識が感じている警戒心が、腕組みという形で表出しているのです。これを逆手にとれば、意識的に「オープン・ポジション」をとることで、相手に好印象を持ってもらうことも可能です。

「オープン・ポジション」は、腕や手を広げる、手のひらを見せる、口を開くといったしぐさのこと。解放、リラックス、許容、同意などを意味し、相手に心を開いているサインになります。

 前出の「メラビアンの法則」のアルバート・メラビアンによると、企業のトップや政治家など、社会的地位の高い人ほど、このオープン・ポジションを取ることが多いとされています。オープン・ポジションは相手から信頼される基本のジェスチャーであり、信頼感を得たり人を説得するときには欠かせないものです。

 相手を説得するとき、好感度を高めて信頼を勝ち取りたいときは、顔だけでなく「デコルテ」「足のつま先」まで、しっかり相手のほうに向けて話を聞くことです。「全身で話を聞こう」という態度が相手に伝わり、話の内容に関係なく好印象を持ってもらいやすくなります。

 つま先などは、相手には見えていない部分ではありますが、電話で謝罪をするとき、相手から見えていなくても頭を下げながら謝ったほうが、気持ちが伝わるように、「しぐさや態度が気持ちを作る」ということを覚えておきましょう。

マーキングで相手を正確に誘導する

 タッチやしぐさ、声の調子などにより、特定の物や言葉を強調することで、こちらの思惑どおり相手を誘導していくことを「アナログマーキング」といいます。

「今回の新サービスの特徴は」と言った後にひと呼吸おいてから「リアルタイム共有です」と言い、サービス内容を目立たせる。「これは人気商品で、今週だけでも30人のお客さまにお買い上げいただいてるんですよ。ご家族全員分をお買い上げいただいたり、プレゼント用にご購入されたりしていく方も多いですね」と「買う」という意味の言葉を繰り返す。そうやって意識づけすることで、興味を持たせたり、購買意欲をそそったりすることができます。