シリコンバレーの歴史は70年

――スタートアップと大企業ではどこが異なるのでしょうか?

最大の違いは、スタートアップが成長可能性のある新しいビジネスモデルの探索プロセスであるのに対し、大企業は検証済みのビジネスモデルの規模拡大のプロセスである点です。最初の探索プロセスが得意な人は、第2段階の拡大プロセスが苦手なことが多い。彼らはイノベーションのほうが好きなので、スタートアップを大企業に売却することを選ぶのです。けっしてお金のため、あるいは我慢強くないためではありません。

しかし、最近はスタートアップの世界も成熟し、5~6回起業し経験を積んだシリアルアントレプレナーたちが、「今度は会社を大きくすることに挑戦してみよう」とチャレンジを始めています。米国のシリコンバレーの歴史はインテル創業時に遡れば約40年、ヒューレットパッカードに遡れば約70年にもなります。それだけの歴史があってこそ、グーグルやフェイスブックが生まれたとも言えます。イスラエルのスタートアップのエコシステムは誕生してから20年余、成熟の途上なのです。

――本が出版されてからの状況の変化は他にもありますか?

2009年当時、スタートアップのエコシステムは世界に2ヵ所しかなかったと言えるでしょう。米国西海岸のシリコンバレーとイスラエルです。今や、ニューヨーク、ボストン、シンガポール、スペイン、ブラジル、ケニア、南アフリカ、中国、韓国そして日本にも誕生しつつあります。わずか2~5年の間に世界中がスタートアップのエコシステムをつくろうと動き出しています。本の翻訳出版が多少なりともこうした動きに貢献できたとしたら、名誉なことです。現在、翻訳は27言語で出版されたか出版予定になっており、つい最近もウクライナ語のオファーがありました。

――日本ではこの本を読んだサムライインキュベートCEOの榊原健太郎さんが、今年イスラエルに拠点を開設するに至りました。翻訳出版された国々での反響にはどんなものがありましたか?

サムライインキュベートの皆さんとは、彼らの初めてのイスラエル訪問時にも今回の来日でもお会いし、本がきっかけで拠点ができたことを非常に嬉しく思っています。他の国からも、イスラエルの起業国家としての側面に注目し、訪問し、サムライインキュベートと同様のことを始めている人たちがいます。