失敗を受け入れる文化が重要

――個々の企業に焦点を当ててはいないとおっしゃいましたが、本の序章に登場するベタープレイスの倒産についてお考えを聞かせていただけませんか?

残念ながら、印象的なオープニングストーリーが失敗の事例となってしまいました。しかし、失敗も重要です。失敗なくして起業の成功はありえないからです。この考え方はどんなエコシステムにとっても基盤となる重要なことです。シリコンバレーとイスラエルが抜きんでているのは、リスクを取ることと失敗を受け入れる文化です。スタートアップのエコシステムでは失敗は恥ではない。初期の失敗経験が起業家を大成功させるという調査結果もあります。

ベタープレイスについて特に言えるのは、お金を持ちすぎる危険性です。巨額の投資を集めたために、ビジネスモデルの検証ができていないうちに人を雇うなど企業規模を急拡大させてしまい、集めた資金を使い果たしてしまったのです。創業者のシャイ・アガシが現在何をしているか、私は知りませんが、きっとこの失敗から学んで次には成功してくれると期待しています。

――今回が初来日ですが、事前に日本について抱いていたイメージと違っていたことはありますか?

まだ2日しか滞在していませんが、色々な方と会って話し、非常に進んだ国という事前の印象を再確認しました。日本は多くの新しい技術を最初に生み出した国です。たとえば、アップルは新しいiPhone6を発表し「モバイルで支払ができる」ことを売りにしていますが、この技術は日本の携帯電話会社が何年も前からやってきたことです。しかし日本ではこうした技術を「ガラパゴス」と呼んでいるとも聞きました。

先進的な技術があるのに世界に広がらない。これは私にとって興味深く不思議なことです。ソニーや自動車メーカーなど数多くの著名なグローバル企業・ブランドがあって、世界に広げることができるはずなのにイノベーションがどこかで行き詰っている。この点で、イスラエルと日本は協力し合えるのではないかと思います。イスラエルは国内市場が非常に小さいため、初めからグローバル展開を考えざるを得ないが、日本は逆で日本市場だけ考えていても成り立っていたことが利点であり、今は不利な点になっているわけです。