マンション再生は、「区分所有者だけの問題」ではない。建て替えられたマンションを新たに購入する人にも、「どんな建替えが行われたのか」は重要な情報だ。そもそも建替えマンションには、一般の新築マンションにはない幾つもの魅力がある。ここで検証してみよう。

人間関係が良好で、管理や
建物の知識の蓄積がある

 2013年10月に竣工した「ブリリア多摩ニュータウン」がまだ分譲中のときのこと。売り主の東京建物が来場者アンケートを取ったところ、興味深い結果が出た。このマンションに関心を持った理由として、「ここは建替え物件なので、良好なコミュニティや人間関係が構築されているから」と答えた人が多かったのだ。

 では、実際に住んでみてどうか。「例えば14年2月の豪雪時、新入居した若いお父さんたちが率先して雪かきをしていました。管理組合の理事にも、挙手して参加する姿が見られます。元の管理組合は団塊の世代が多かったのですが、建て替わってうまく新陳代謝し、非常に良好なコミュニティが形成されているようです」

再開発プランナー
マンション建替え
アドバイザー 山田尚之 氏

 そう語るのは、同マンションの建替えに携わった再開発プランナーの山田尚之氏。

 ここだけではない。建替えがうまくいくマンションは、おおむね良好なコミュニティが形成され、人の交流も活発だ。そんな中に、新規分譲分の住戸を購入し、若い子育て世代が入ってくると喜ばれる。世代間の交流も活発になり、コミュニティが自然と拡大していく。一例が下に挙げた萩中のケースだ。

 特に評価されるのは、建替えを経験した管理組合には、管理や建物に関する知識、マネジメントノウハウが蓄積されている点だ。ゼロベースで始まる管理組合は管理規約を整え、長期修繕計画を作るところから始めるが、建替えマンションの管理組合なら、「このタイミングに、こんな点検や修繕をしておけばよい」という、経験に裏打ちされた知恵があるわけだ。

8棟368戸の団地・萩中住宅が、18階建てのオーベルグランディオ萩中(534戸)に生まれ変わった

 

地元の糀谷商店街は「歓迎」「祝完成」と横断幕を掲げて同マンションの住民を出迎えた。立派なマンションが建ち、新しい住民が増えれば街も活気づく。地元で愛される好例だ