11月下旬にドバイ・ワールドの問題が表面化した後に、筆者は出張でロンドンにいた。数日後の帰国時に見た日本のマスメディアの報道は、英国よりも大騒ぎをしていた。ドバイ問題というより、それに付随して起きた円高が政府、財界、マスメディアを狼狽させた。

 結局、ドバイ問題の後に中央銀行が緊急に金融緩和策を導入したり、政府が財政刺激策を拡大したのは、主要国では日本だけだった。ここ数十年いわれ続けてきたことだが、円高に対する日本経済の耐性を高めるには、サービス産業を地道に育成していく必要がある。オーソドックスに考えるなら、その一つは金融産業だろう。

 中国政府はその方向で明確に動いている。NHK(12月13日放送)の「チャイナ・パワー」では、外貨準備を大胆に使って投資銀行業務を活発化させている中国の方針が描かれていた。製造業はいずれ人件費上昇と人民元高によってやっていけなくなると中国政府は考えているからだ。

 また、以前このコラムでも少し触れたが、2009年4月29日に国家発展委員会は、国際金融センターとしての上海の地位を2020年までに高めるための計画を発表している。海外から優秀な人材を呼び込むため、高給の金融マンに対する所得税減免などを検討しているという。