並木 2つ目のプロジェクトは、どういうものだったんでしょうか。

村野 ウェブサイトのモデルチェンジと、それに関わる組織や仕組みの改革です。これはIT系の大手コンサルティング・ファームと組んでやりました。先ほど申し上げたソニーの状況がウェブサイトにもそのまま表れていて、事業部ごと、国ごとに構造も違えば、コンテンツもバラバラだったんです。やはりグローバルで共通したウェブ構造、コンテンツ・マネジメントの仕組みを整えようということになりました。

改革の立案だけでなく実践と効果にコミットし<br />フィーも成果に連動させたコンサルが理想だ「どんなに素晴らしい戦略も、リソースがなければ実行できない」(村野さん)

 コンサルティング・ファームと大掛かりなチームを組み、全世界の担当者へのインタビューやワークショップも相当やって、こうすれば他社よりも良いものができるというところまでは設計することができました。そして実行段階まで来た時、問題になったのがコストでした。IT系の大規模な改革ですから、場合によっては数十億円のシステム投資を伴うことになる。悩みに悩んだ末、そのコンサルティング・ファームに一任せず、いくつかの領域に切り分けて実行に移すことにしました。

並木 実行まで全て託すには莫大な投資が必要になる。それよりも、全体を切り分けて、領域ごとに強いパートナーと組んだり、自前でやる方が効率的だと考えたわけですね。

村野 そういうことです。この時に学んだのは、たとえどんなに素晴らしい戦略をつくってもらったとしても、最後に自社のリソース、つまりヒト・モノ・カネがなければ実行できないということ。リソースを無尽蔵に使う前提の戦略を提案されても、最後に「お金がない」「人がいない」といったリソース不足で実現できないのでは意味がありません。でも、実行という行程にこそ最もリソースが必要なんです。最初から依頼する側とコンサルティング・ファームとの間でリソースの状況をオープンにしてからソリューションをつくらないと失敗してしまう。

並木 それはコンサルティング・ファーム側の責任でもありますね。理屈上の正解はそうかもしれないけど、実現性のないものを描いても仕方がない。

村野 最初に「どれくらいのリソースを使えるんですか」と聞いてくれればいいんですが、そういうことは質問されませんよね。とにかく「最適な戦略はこれだ」と提案をしてきて、リソースが足りないのは企業側の責任ということになってしまう。コンサルティング・ファームに仕事を頼む時の落とし穴だと思います。