今読みたい戦略書【第1位】
ジョエル・パーカー『パラダイムの魔力』
目標自体を正しい形に変える「パラダイム・シフト戦略」

古今東西3000年から厳選する、<br />今、日本人が読むべき「戦略書」ベスト10【前編】

 日本では1995年の初版が発売されたジョエル・パーカーの『パラダイムの魔力』です。パラダイムとは一般的に、ものの見方や捉え方と理解されますが、どうすれば成功できるか、私たちが信じているルールや規範がパラダイムとも言えます。

 パラダイムが一定の期間は、既存の勝者がわが世の春を謳歌します。ところが、一旦パラダイムが転換をすると、勝者は敗者に転落をするのです。

 スイスといえば高級腕時計の産地ですが、水晶の振動によって時間を計るクォーツ時計の登場でスイスの腕時計職人数万人が職を失いました。機械式時計は、クォーツという新しい仕組みに正確さで対抗できなかったからです。

 気づきたいのは「パラダイムの転換で」私たち自身が、勝者だったはずなのに、いつのまにか敗者にされてしまっていないか、ということです。

 私たちはよく知っているパラダイム(規範)にどっぷり浸かっており、その外側にある豊かな可能性に気づいていないかもしれないのです。一歩パラダイムの外に踏み出せば、そこは新しいビジネスチャンスの宝庫かもしれません。

 本書は「パラダイムをどう転換するか」について、具体的な方法論が書かれており、行き詰まりを感じている自社の方向性を変える、新しい商品を開発する、既存以外の顧客層を発見するなどに、効果を発揮してくれる戦略書です。

 著者のジョエル・パーカーは未来学の研究者であり、1970年代に日本企業の進出で壊滅的な打撃を受けた米国企業を復活させた人物の一人と言われています。現在でも私たちの目を見開かせる優れた戦略を学ぶことができる良書です。