株式レポート
10月7日 18時0分
マネックス証券

二極化と多様化 - 広木隆「ストラテジーレポート」

恩恵に浴する側と不利益を被る側がある

ドル円相場が1ドル110円をつけるなど円安が加速している。それを受けて、経済界や市場関係者の間で円安を巡る議論が熱を帯びてきた。これ以上の円安は日本経済にとってプラスなのか、という議論である。以前から繰り返していることだが、為替レートというのは2国間の通貨の交換比率である。だから、本来は「円が強い」とか「円が安い」というような表現は一概にはできない。円の総合的な価値を測るには「実質実効為替レート」というものが用いられる。「実質」とは、名目の為替レートを、自国と他国のインフレ格差で調整することである。例えば、日本製品の価格上昇率がゼロで、米国製品の価格上昇率が 10%であれば、名目のドル円レートが変化しなくても米国製品は割高になるため、日本製品の対外競争力は 10%改善する。「実効」とは、複数の為替レートを貿易量などを基準として加重平均することである。対ドルでは 10%競争力が改善していても、対ユーロ、対ウォン、対人民元では、10%競争力が悪化していれば、日本製品の対外競争力がグローバル全体で改善しているとはいえない。ある分析によれば、現在の円レートは実質実効ベースで、円が変動相場制に移行して以来の最安値水準にあるという。これ以上の円安は未曽有の領域に足を踏み入れることになり、日本経済にとってのマイナス面のほうが多くなるという意見もある。無論、ものごとには常にメリット・デメリット両面があるので、「(円安は)良い・悪い」の二元論で決着がつくような話ではない。「デメリットもあるが日本経済全体で見れば現時点ではメリットのほうがまだ大きい」というのがコンセンサスのように思われる。

メリット・デメリット両面がある、と述べたが、正確に言えば、恩恵に浴する側があり、不利益を被る側がある。だから、「日本経済全体で見れば」とか「(メリット・デメリットを)ネットアウト(相殺)すれば」というのは実態のない議論である。「日本経済全体」という主体も、相殺された主体もないからである。

好調な外需企業と内需企業の不振

「現在の円安水準ではまだメリットのほうが大きい」というのは、大企業製造業などグローバルプレーヤーの視点に立った意見だろう。円安にも関わらず日本からの輸出が伸びないが、それは長く続いた円高に対応するため製造業の海外生産移管が進んだせいである。よって、以前に比べて円安の効果は限られるものの、韓国企業等ライバルとの価格競争力は確実に増すし、円換算の収益が増加し為替差益が企業業績を押し上げる。海外でビジネスをおこなっている企業にとっては、円安はメリットのほうが大きいことは明らかである。

一方、内需企業にとっては円安はメリットがないばかりか、デメリットが大きい。消費増税後の落ち込みからの持ち直しが鈍いところに、輸入コスト増で値上げを強いられる。さらに人手不足による人件費高騰も追い打ちをかける。

好調な外需・製造業と低迷する内需・非製造業という二極化の構図が鮮明になっている。月初に発表された9月の日銀短観の結果もそれを裏付ける内容だった。大企業非製造業の業況判断DIは前回調査から大きく落ち込んだ一方、大企業製造業のDIは、低下を見込んでいた市場予想に反して改善を示した。ところがDIが改善したのは「大企業」の製造業だけであり、中堅・中小企業は製造業であってもDIは悪化している。二極化は、外需・製造業VS内需・非製造業という構図だけでなく、大企業VS中小企業、都市部VS地方、といろいろなアングルで捉えるべきであろう。
上場企業目線と国内景気目線

東証一部の時価総額比率は、製造業が半分、非製造業が3割、残りが金融業である。製造業:非製造業:金融業の時価総額比率、5:3:2はそっくりそのまま利益額の比率でもある。上場企業の時価総額と利益で見れば、半分が製造業だ。しかし、日本全国、中小企業も含めた会社の「数」では、製造業の比率は1割に満たない。圧倒的な大多数は国内のローカルなサービス産業である。これは前回のレポートでも述べたことだが、<外需好調>という事実は、ドメスティックな世界で生きているわれわれには実感が乏しい。どうしても<内需不振>にばかり目がいきがちである。なぜなら、われわれの周りにあるのは低迷している内需産業ばかりだからである。



本日の東京外国為替市場はまさにこの点を巡る要人発言で揺れ動いた。参院予算委員会に出席した黒田東彦日銀総裁は民主党の福山哲郎氏との質疑の中で「ファンダメンタルズを反映した形での円安は景気にプラス」などと述べた。同発言を受けて円相場は伸び悩み、それに歩調を合わせる形で日本株にも買いが入った。ところが午後に入ると円相場は再び1ドル108円台に上昇した。安倍首相が午後の参院予算委員会で、円安の影響について「ガソリン価格の高騰、燃料費高騰などによって家計、中小・小規模事業者にはデメリットがでてきている」などと答弁したことをきっかけに円高ドル安が進んだのである。

グローバルプレーヤーが主役の上場企業の視点に立つか、大多数の内需産業主体の国内景気の視点に立つかで円安の捉え方は180度違ってくる。グローバル製造業にはプラス、国内景気にはマイナスである。代表的な景気指標のGDPはGross Domestic Product、文字通りDomestic(国内)の景気動向を表す指標だ。いくらグローバル企業が海外で稼いでも(輸出が増えなければ)GDPにはカウントされない。だからこれからの時代は、GDPが悪くても、グローバル製造業の業績がいい、ということはじゅうぶんあり得る話である。このギャップをどう捉えるかが、今後の相場の焦点になるだろう。

さらに、前述した通り、外需・製造業VS内需・非製造業という単純な構図だけでなく、大企業VS中小企業、都市部VS地方、といろいろなアングルで捉える視点が必要である。というのは、一律に外需=好調、内需=不振という構図が、上場企業については成り立っていないからである。業種別指数を見れば、確かにグローバル製造業の業績とパフォーマンスが良く、内需・非製造業のパフォーマンスが悪い、ということは言える。しかし、個別にみれば例外はいくらでもある。全般に好調な電機セクターにおけるソニーの不振を挙げるまでもないだろう。自動車株のなかでは富士重が大幅高となる一方、ホンダの出遅れが顕著である。精密機器のなかではキヤノンが右肩上がりの推移に対してニコンの年初来騰落率はマイナス2割を超える。





一方、全般に低調な内需のなかでは小売セクターの良品計画が連日の高値更新となっている。小売りのなかで目立つのはビックカメラの株価上昇だ。2014年8月期の純利益が前期比で4倍となり過去最高となった。都心中心の店舗網で夏の賞与が増えたサラリーマンや訪日客向けに、高価格の家電が売れた。一方、ヤマダ電機など郊外や地方が主力の家電量販は苦戦している。これは衣料品で地方・郊外のロードサイド店が主体のしまむらが低迷しているのと同じ構図である。内需VS外需だけではなく、首都圏VS地方という二極化の典型例である。内需ではほかに清水建設などの建設株、京成などの電鉄株の多くも高値圏にある。もはや内需ディフェンシブ株という位置づけでは括れない医薬品セクターのなかでもアステラスが武田を時価総額で逆転した。利益率の高い新薬の販売が欧米で好調で、成長期待の差がパフォーマンスに現れている。





外需が好調、内需が不振とステレオタイプの二分化はできない。株はあくまでも個別銘柄次第である。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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(マネックス証券)


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