他者を尻目に、勝ち続ける人たちの戦略の特徴

 これまでご説明したように、人間は感情の生き物であるがゆえに、基本的な弱点や欠点をいくつも持っています。人間は経験から学ぶと同時に、経験によって年老いていくのですから、これに正しく抗うためにはやはり優れた処方せんが必要になります。

【人間の基本的な弱さを示す6つの例】
(1)今までやっていたことをスパッと切り替えられない
(2)人の情熱は続けることが難しい(特に挑戦的なこと)
(3)他人から無理に命令されたことに情熱を傾けられない
(4)複数同時に目標を追いかけることが苦手
(5)時間が経過すると過去の失敗を都合よく解釈する
(6)目標のための組織ではなく、組織のための目標を作り上げる

 過去積み重ねてきたことで、小さな勝利を手に入れている人たちは、その経験にこだわるあまり、新たなことに一歩を踏み出すことができません。組織が構築されたことで、なんらかの特権的な立場や強権を手に入れた人は、新たに出現した正しい目標によって自分の組織が分断されることを望まず、必要な目標を潰し、自分の組織に有利な目標を敢えて立ててしまうことさえあります。

 一方で、現代では「プロジェクトのためにチームを毎回組み上げる」ような柔軟な組織構造の企業も増えています。これは組織による権力を許さず、「成果を上げることでのみ」権力やリーダーシップが発揮されることを狙っているからです。

 古い既存の組織は、みずからの枠組みを超えるような新たな目標が立ち上がることを嫌う傾向があります。その新目標の重要性が明らかになると、自分達の重要性が脅かされるように感じてしまうからです。

 世の中には、新たなプロジェクトが立ち上がることを熱望する企業もあれば、それを忌み嫌う企業もあるのですから、前者が後者を尻目に勝ち続けるのも、当然のことだといえるのです。