株式レポート
10月8日 17時0分
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米国市場急落の背景と第2のイエレンダッシュボード - マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部「米経済の「今」を読む -経済指標動向-」

非農業部門雇用者数 9月 +24.8万人 市場予想 +21.5万人 前月 +18.0万人(上方修正)
失業率 9月 5.9% 市場予想 6.1% 前月 6.1%
労働市場情勢指数 9月 2.5 前月 2.0

■米国株式市場の急落について
昨日(7日)の米国株式市場でダウ平均が270ドル超下落した。急落の背景には、米国が世界経済を一手に支えるという構図にマーケットが疑念を抱いたことが垣間見える。世界経済全体を見渡すと、まず日本は消費増税の影響で個人消費の戻りが鈍く、企業の設備投資も冴えない。日銀短観では先行きに改善傾向も見られたものの、現状は大企業製造業など一部を除いては企業の景況感は悪化している。また、欧州では景況感の低迷に続き昨日発表されたドイツの鉱工業生産指数が前月から4%の悪化と、数年ぶりの悪化率となった。欧州中央銀行(ECB)は金融緩和に積極的な姿勢は見せつつも、国債買い入れには踏み込めない状況が続いている。中国は構造改革と経済成長のバランスを取る政策運営を行い、世界経済全体を牽引できるような力強さはない。

これらの状況を反映したのが、昨日IMF(国際通貨基金)が発表した世界経済の成長率見通しである(表参照)。日本・ユーロとも前回発表より下方修正され、今後の経済成長に暗雲が立ち込めた。中国について予測は変わらずだったものの、そもそも2015年の成長率は2014年に比べて鈍化するとの予測に変わりはない。


これまでは、米国が強いので大丈夫。というのがマーケットのコンセンサスだった。だからこそ米国株は史上最高値を更新し、日本株も年初来高値圏まで上昇した。実際に寒波の影響から脱して以降の米国経済は力強く、IMFの予測でも今年の成長率は0.5%上方修正された。

ただ、足元で発表された米国の経済指標にはやや変化の兆しが見られる。9月のISM景況感指数は製造業・非製造業とも悪化し、個人消費の先行指標である新車販売台数も高水準とはいえ前月から販売が鈍化した。また、消費者センチメントを示すカンファレンスボード消費者信頼感指数も市場予想に反する形で、大きく悪化した。

もちろん各指標の悪化が単月のブレである可能性があるとともに、主要国の中で相対的に米国経済が最も力強さを持っていることは疑いの余地はない。ただ、果たして米国以外の国や地域の低迷をカバーできるほどの強さを維持できるのかどうかにマーケットが疑念を抱いたというのが昨日の株価急落の背景ではないか。

もちろん来月以降に各指標が持ち直す可能性もあり、現時点では判断はつきにくいが、上述したような状況にある以上、米国株は足元やや調整色を強める可能性があると見ている。ただ、過去3回の大きな調整ではダウ平均はいずれも200日移動平均線をサポートラインとして反発しており、今回も同様の状況になる可能性があると見ている(グラフ参照)。


現在200日移動平均線があるのは1万6580ドルで、心理的な節目ともなりやすい1万6500ドルというのが当面の下値水準と見ている。そこからさらなる調整があるかどうかは、今後本格化する企業の決算発表と来月以降の経済指標次第と考えている。

■雇用者数の伸びは順調で、労働市場の堅調な回復を再確認
3日に発表された9月分の米国雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月差24.8万人増と市場予想(21.5万人増)を上回る増加を達成した(グラフ参照)。8月分は14.2万人→18.0万人に、7月分は21.2万人→24.3万人とそれぞれ上方修正された。8月分については他の労働関連指標との整合性の観点から、上方修正の可能性があることについて本レポートでも記していたが、予想通りの結果となった。


今年に入ってからの非農業部門雇用者数の伸びは平均で22.6万人と、堅調な労働市場の改善の目安とされる20万人を大きく上回っている。9月の雇用者数も大きく伸びたことで労働市場には着実な改善が見られることが改めて浮き彫りとなった。

■雇用統計で労働市場の堅調な回復を再確認
あわせて発表された失業率は5.9%と2008年7月以来約6年ぶりに5%台まで低下した。もちろん原則的に失業率の低下は望ましいことだが、労働参加率が62.7%に低下したことが懸念される(グラフ参照)。


9月の失業者数は前月に比べて32.9万人の減少となった。一方で農業部門を含めた就業者数の総計は前月に比べて23.2万人しか増加していない。調査方法に違いがあり一概には比較できないが、失業者数の減少と就業者数の増加の差分は職探しを諦めてしまった人が一定数いることを意味する。

失業率は失業者÷労働人口(15歳以上の働く意欲のある人)で計算されるので、実質的な就業者数が増加していなくても、職探しを諦めてしまった人が労働人口から除かれれば失業率は改善する。例えば失業者10人、労働人口100人(就業者90人、失業者10人)であるとき、失業率は10÷100×100=10%である。一方、もし失業者10人のうち4人が職探しを諦めてしまえば、失業者から4人が除かれることとなる。(10―4)÷(100―4)=6÷96=6.25%と実質的には労働市場の改善が起きていないにもかかわらず失業率は減少する。

このように依然として失業率の低下は労働参加率の低下(職探しを諦める人の増加)によるところが大きく、失業率が労働市場の実態よりも低く出ている可能性がある。

以上のように9月の雇用統計ではしっかりとした雇用者数の伸びや失業率の低下など労働市場の改善は確かに進んでいる一方で、質的改善は不十分であるというこれまでの傾向が改めて浮き彫りとなった。

■今月から新たに発表された「労働市場情勢指数」
今月から労働市場情勢指数(Labor Market Conditions Index)の発表が開始された。今後雇用統計の発表の翌営業日に発表されることになる。今月の指数は+2.5と前月の+2.0より伸びがわずかながら加速した格好となった(グラフ参照)。

同指数は計19の労働市場関連指標をまとめたインデックスである。これまでイエレンFRB議長が重視するとされてきた9つの労働市場関連指標を「イエレンダッシュボード」と呼ばれてきた。労働市場情勢指数は正に第2のイエレンダッシュボードとも呼べる指数である。今後はFRBの金融政策決定に影響を与える重要な指標として注目度が高まっていくと考えられる。なお、19の指標は以下の通り。


(1)失業率(Unemployment rate)
(2)労働参加率(Labor force participation rate)
(3)経済的理由からパートタイマーに甘んじている人(Part time for economic reasons)
(4)民間部門の雇用(Private payroll employment)
(5)政府部門の雇用(Government payroll employment)
(6)派遣労働者の雇用(Temporary help employment)
(7)生産労働者の週平均労働時間(Average weekly hours (production))
(8)全労働者の週平均労働時間(Average weekly hours of persons at work)
(9)生産労働者の平均時給(Average hourly earnings (production))
(10)複合求人指標(Composite help-wanted index)
(11)雇用率(Hiring rate)
(12)失業から雇用への遷移率(Transition rate from unemployment to employment)
(13)全雇用者数に占める失業保険の利用率(Insured unemployment rate)
(14)5週未満の失職者(Job losers unemployed less than 5 weeks)
(15)解雇率(Quit rate)
(16)5週未満の自己都合失業者(Job leavers unemployed less than 5 weeks)
(17)カンファレンスボード調査の「職探しが容易」と「職探し困難」(Jobs plentiful v. hard to get)
(18)雇用計画(Hiring plans)
(19)職探しが困難(jobs hard to fill)

これまでも月初は雇用統計のほかISM景況感指数、新車販売台数など重要視される経済指標の発表が多かったが、また1つマーケットの注目度の高い指数の発表が追加されることになった。今後も毎月雇用統計の結果とともに労働市場情勢指数の結果をお知らせしていきたい。

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