黒田日銀総裁:
柔軟化する「2年」

 9日、黒田日銀総裁はニューヨークで「日本経済:慎重論に答える」と題して講演をした。経済、物価、金融政策など幅広い内容であったが、最も印象に残ったのは「2年」がどこにも出てこなかったということだ。

「2年」とは言うまでもなく、「CPI前年比2%」という「物価安定の目標」の達成時期の目処である。「量的・質的金融緩和」(以下、QQE)が始まったのが2013年4月であることから、「2年」はおおむね2015年半ばと解釈できる。

 この講演より前に、黒田総裁が金融政策について講演をしたのは9月18日だが、そこでは「2014年度から16年度までの日本銀行の経済・物価見通し期間の中盤頃」とされた。「2年」とは明言していないものの、ある程度「2年」が意識されていた。

 ところが前述のニューヨークでの講演では、「2015年度を中心とする期間」となっていた。実際の講演で使われた言語である英語では、「in or around fiscal 2015」となっており、「2015年度前後」と読める。9月18日の講演と比べると、随分と「2年」が柔軟化してきたという印象を否めない。

物価:
期待インフレ率の上昇を
示唆する材料は少ない

 下方屈折は避けながらも、景気が停滞色を帯びている。こうした中、消費者物価指数(CPI)の前年比変化率は、消費税率引き上げの影響を除くと、プラス幅が広がりにくくなっている(図表1参照)。たとえば、日銀も注目する「コアCPI」(生鮮食品を除く総合CPI)は4月の前年比+1.5%(消費税率引き上げの影響を除く)を直近のピークとして、8月には同+1.1%とプラス幅が縮小している。

「CPI前年比+2%」の時間軸が柔軟化 <br />日銀はフォワードガイダンスの再設計へ<br />――森田京平・バークレイズ証券<br />チーフエコノミスト