「2014年までにわれわれのタイヤは100%、エコタイヤにする」。

 ブリヂストンの荒川詔四社長は、「エコピアEX10」の新製品発表の場でこういい切った。

 2月に発売するこの新製品は、濡れた路面でのブレーキ性能を従来品(B’style EX)に対して14%向上させるうえ、転がり抵抗(路面との摩擦)を25%軽減し、燃費を3.5%改善するという。気になる価格は「従来品並かやや下回る」(石橋秀一・執行役員)としている。

 現在、エコタイヤ市場は日本国内のタイヤ市場のわずか20%しかない。だが、ブリヂストンはここに活路を見出した。

 「08年に発売したエコタイヤ“エコピアEP100”は普通のタイヤより2割高いにもかかわらず、販売が好調で、ミニバンに乗っている人たちも買ってくれた。これが手ごろな価格だったら、もっと爆発的に市場が広がる」(石橋執行役員)と考えたのだ。

 タイヤ市場をとりまく環境は厳しい。プリウスなどのエコカーがエコカー減税の追い風を受けているなか、タイヤは恩恵を受けられず、市場そのものが前年比3割も縮小している。それだけに需要を喚起する起爆剤が必要だった。

 「実は、新製品投入の時期を1年、前倒しした。開発の現場は大変だったが」と石橋執行役員は明かす。

 というのも、今年1月から、日本自動車タイヤ協会は転がり抵抗と濡れた路面でのブレーキ性能を数値化し、低燃費タイヤの統一基準表示を始めたためだ。業界基準ができあがったことで、横浜ゴムや住友ゴムなどのライバルメーカーも低燃費タイヤの拡販に力を入れ始め、市場拡大が始まろうとしている。つねにシェアトップを走ってきたブリヂストンはいち早く普及価格帯の新製品を投入することで、先行者利益を狙う。

 ブリヂストンは09年12月期の決算で、61年の上場以来初めて、最終利益で赤字に転落する見通し。特に、同社の売上げの4分の3を占める海外では、新車販売の不振に加え、中国製などの低価格タイヤに押され、シェアを落としている。それだけに、エコタイヤで何としても低価格品との差別化を図りたいところだ。

 「付加価値があり、かつ値上げをしない新製品は、ブリヂストンのなかでも珍しい経験」と石橋執行役員も言う。環境を全面に打ち出した新製品を日本市場に根付かせることができるかどうか――。F1からも撤退し、エコタイヤに経営資源を集中させたブリヂストンの最初の関門突破に向けて、ブリヂストンはアクセルを踏みこんだばかりだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)

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