この連載で論じているように、若年者人口の減少に伴って、労働力人口は減少する。他方で、医療介護に必要な労働力は増加する。これは、日本経済に極めて大きな影響を与える。

 日本経済の問題として総人口の減少がしばしば取り上げられるのだが、本当に問題となるのは、総人口ではない。また、総労働力でもない。「総労働力-医療介護必要労働力」が著しく減少することが問題なのだ。

「労働力調査」ベースの
将来推計を行なう

 この連載の第10回では、労働力人口と介護人口に関する分析を行ない、第14回では、医療福祉従事者の将来推計を行なった。

 以下では、同じ問題を別のアプローチで分析する。具体的には、つぎのとおりだ。

(1)第10回では、労働力人口について、内閣府の計数を直線補完して2025年における労働力を推計した。ここでは、独自の推計を行なう。

(2)第14回では、医療福祉従事者として、「社会保障に係る費用の将来推計について」にある計数を用いた。しかし、前回述べたように、この計数は、労働力調査における「医療、福祉」の計数より少ない。経済全体の問題を論じる際には、労働力調査ベースの計数を用いるほうが便利なので、以下では、このベースの計数を用いることとする。

(3)第14回では、25年以降もそれまでの傾向が継続すると仮定した。しかし、以下に述べるように、医療福祉従事者は高齢者数と関連していると思われる。したがって、単なる傾向延長ではなく、人口推計と関連付けて医療福祉従事者の推計を行なうこととする。