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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

ノーベル賞受賞者は“孤高の研究者”ではない
日本が学ぶべき「チームを生かす達人」だ!

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第4回】 2014年10月20日
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受賞者の「人となり」に、次世代の教育や
リーダー育成へのヒントがある

 そうした意味で、“孤高の研究者”ではない彼らの「人となり」を、あえて分析してみるのも大いに価値のあることだと思います。

 彼らがいかにして育ち、学び、偉業を成し遂げたのか、チームづくりやネットワークづくり、コミュニケーションなどのスキルはどのように養われたのか、日本の教育制度やイノベーション、アントレプレナーシップなどについてどのような意見をもっているのか――。そこには、日本の次世代の教育やリーダーの育成などに活用できる重要なエッセンスがたくさん含まれているはずです。

 ただ、ノーベル賞受賞者の話を聞いていると、日本の教育制度について辛口の意見がよく聞かれます。でもそこは「何を偉そうに」などと思わず、核心を突く問題提起があることを見抜かなければなりません。彼らの話の中には日本の教育改革のヒントとなることが隠されているのです。

海外留学すると
就職に不利になる?

 実は最近、私は日本の教育を変える政府の諮問委員会の委員として活動を始めました。第1回ミーティングが10月下旬にありますが、これまでの経験を生かし、今までにない斬新な提言を行いたいと考えています。

 まず言いたいのは、日本の教育にはイノベーションが必要ということ。こんな言い方はよくないかもしれませんが、今の教育制度は公務員はつくれても、これからの時代に求められるグローバルな人材を育てることはできないでしょう。

 では実際、何をどのように改革すべきなのか。その手がかりになる1つのエピソードをここで紹介したいと思います。

 私は来日して以来、暗号論やベンチャー論をいくつかの大学で教えてきましたが、8年ほど前から、学生が海外留学で視野を広げることができればもっと成長できると考え、年に数人の大学院生を選んで留学のための奨学金を提供しています。

 当初、本当に驚いたのは、男子学生の約3分の1が本人は行くつもりだったのに「母親に反対されて行けなくなった」と断ってきたことです。

 最初は事情がよく飲み込めず、とりあえず母親に話を聞こうと電話をしました。すると、返ってきたのは「うちの息子をどうするつもりなんですか!」という激怒の声。母親は「海外留学すると就職に不利になる」と考えているのです。

 企業側の新卒一括採用という慣行上の問題もありますが、「いい大学に入って、いい会社に就職してほしい」という母親の願いが子どもの可能性を奪っているわけです。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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