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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

ノーベル賞受賞者は“孤高の研究者”ではない
日本が学ぶべき「チームを生かす達人」だ!

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第4回】 2014年10月20日
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教育改革のターゲットは
ズバリ「母親」

 母親の考え方を逆算すると、いい会社に入るためには、いい大学の試験に受からなければいけない、だから「試験に受かること」が教育の目標(ゴール)になる。そのために親は早くから子どもを塾に行かせます。

 はっきり言って私からすれば、塾というのは本当にナンセンス。塾できちんと勉強するのなら学校はいらないし、学校で勉強するのなら塾はいらない。学校の試験でいい点を取るためだけに塾に通うのなら、学校は生徒に対して何のバリューを与えているのでしょうか。

 日本の大学もしかり。勉強しなくても卒業できます。まるで授業料と卒業証書の物々交換を行っているかのように。そして就職すると、何ヵ月にも及ぶ新人研修があります。それまでの教育とはいったい何だったのでしょう。

 もちろん、母親の子どもを思う心を否定しているわけではありません。だって、母親は目標に向かって単純なことをしているだけ。試験に受かるためには「塾に通わせる」という選択肢しかないのですから仕方ありません。

 これまでも教育のカリキュラムを変えるなど、教育改革を行ってきましたが、成果は上がりませんでした。なぜかというと、子どもの教育方針を決める母親の目標が変わっていないからです。ですから、教育改革のターゲットは「母親」です。母親の教育に対する目標やインセンティブを根本的に変える教育改革が必要なのです。

暗記中心の詰め込み型教育では
クリエイティビティを養えない

 これからの時代、ロボットはどんどん進化していきます。でも、企業はロボットを雇いたいとは思わないはずです。それは、独創的なアイデアやモノを生み出すクリエイティビティやイマジネーションがなければ、イノベーションを起こせないからです。イノベーションのない企業はいずれ淘汰されます。同様に、暗記に強いロボットのような人材は価値がどんどんなくなっていきます。

 私はある時期、世界中の小中高生を対象とした「ビジネスコンテスト世界大会」の審査員を務めていました。日本の子どもたちは、小学3~4年生くらいまではとてもユニークなビジネスプランを出してくるんですね。ところが、それより上の学年になると、まったく面白みがなくなります。

 不思議に思って調べてみると、原因は9~10歳くらいから始まる「受験戦争」でした。日本の受験制度では、人よりも多くのことを覚え、多くの点を取らなければなりません。しかし、こうした暗記中心の詰め込み型教育では創り出す力を養うことはできません。また、周りをライバル視するため、多様性を受け入れ、チームとして活動することが苦手になってしまうという危惧もあります。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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